バンブーズブログ

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[社説]賃上げと成長の好循環へ改革を加速せよ


 
#社説
2023/3/15 19:05
労使交渉の回答状況をボードに書き込む金属労協の職員=15日午前、東京都中央区(代表撮影)
力強い賃上げを取り戻す一歩だが、この流れを今年だけで終わらせてはならない。春の労使交渉は15日に主要企業の回答があり、労働組合の要求に満額でこたえる企業が続出した。数十年ぶりという高水準の回答も目立つ。

物価高の圧力を克服して日本経済の低迷を打破するには、幅広く継続的な賃上げが極めて重要だ。企業は不断の改革で賃上げと成長の好循環を加速させてほしい。

日立製作所はベースアップ(ベア)に相当する賃金改善について月7000円の満額回答を出した。昨年の3000円を大きく上回り、現行の要求方式となった1998年以降で最高だ。定期昇給を含む賃上げ率は3.9%となる。その他の電機大手や自動車、重工各社でも満額回答が相次いだ。

厚生労働省によると、主要企業の賃上げ率は95年以降は1%台後半〜2%台で推移し、昨年も2.20%にとどまった。今後の広がり次第だが、今年は3%台に乗る可能性もある。

大手の積極的な賃上げは急速な物価高がきっかけだが、海外との格差縮小や人材獲得を理由に挙げる企業も少なくない。戦略的な賃上げが広がることを期待したい。

持続的な賃金上昇には労働生産性の向上が不可欠である。企業は今こそ人事・賃金制度や働き方の改革に取り組むべきだ。トヨタ自動車は入社年次や学歴を評価要素から除き、社員に挑戦を促す人事制度を来年4月に導入する。

女性の活躍を後押しし、欧米に見劣りする人材教育への投資も大幅に増やす必要がある。

賃上げで優秀な人材を確保し、付加価値の高い商品を生み出して収益力を高める好循環を確立したい。金融を除く上場企業の手元資金は約100兆円と高水準だ。成長分野への投資も欠かせない。

政府は15日、経済界や労働団体のトップと意見交換する「政労使会議」を8年ぶりに開いた。非正規社員や中小企業に賃上げを波及させることを目指している。

中小企業は原材料費の高騰を商品価格に十分転嫁できないところが多い。賃上げの裾野を広げるためにも、大手は取引価格の適正化へ真摯な協議に応じてほしい。

一律の賃上げも目下は重要だが、今後は成長分野への労働移動を促し、欧米のように転職で賃上げが進む柔軟な労働市場を作り上げるべきだ。政府には早急な制度の改革を求めたい。