バンブーズブログ

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[社説]薬の値付けは価値評価もとに


 
 
#社説
2023/3/31 2:00
薬価制度の改善が求められている(東京・霞が関厚労省
薬の公定価格である薬価が4月に改定され、全体の半数近い品目で引き下げとなる。医療費の抑制は必要だが、薬価が医療保険財政の「調整弁」のように使われている面もある。価値に見合った値付けができるよう改善すべきだ。

新薬の薬価は中央社会保険医療協議会原価計算方式で決める。中身は不透明で、革新的な薬も米欧に比べ低くなる場合が多い。

多くの薬は販売競争の結果、実際の取引価格が公定価格を下回る。このため、毎年度の改定で引き下げの対象となる。価格の適正化は欠かせないが、公正な基準のもとでメリハリをつけて実施すべきだ。たとえば、特許期間中の新薬を対象外とするのは一案だ。

がんや中枢神経系の先端的な新薬開発は、十数年の歳月と3000億円前後の投資を要する。最初から価格を下げられれば投資の回収や再投資は困難になる。

世界市場における日本の優先順位は下がりつつある。日本で優れた治療を受けづらくなる恐れもある。医薬産業政策研究所によると、米欧で承認された新成分を含む薬の約7割が国内では未承認だ。

日本製薬工業協会は価値に見合った値付けへ向け、新たな薬の価値評価プロセスを提案している。メーカーが有効性、安全性はもとより患者の健康回復による生産性の向上、家族の負担軽減などの社会的・経済的な価値も示す。

三者機関からその妥当性を評価してもらったうえで価格を算出する。内容は公開し中医協での議論に役立てる。薬価決定の透明性を高める一助となろう。

エーザイは米国で承認された新しいアルツハイマー病治療薬について、米市場向け卸価格の算定根拠となった価値評価の詳細を公表した。国内市場向けの評価結果も示す予定で、参考になる。

研究開発の結果、薬の適応が広がり市場が拡大すると薬価が引き下げられ、さらに類似薬も同水準になる「道連れ」の仕組みも批判が多い。イノベーションの妨げにならない制度設計が重要だ。