#社説
2023/4/14 19:00
厚生労働省の審議会は最低賃金の地域間格差の是正へ区分の見直しを決めた(6日)=共同
地方での賃上げが着実に進む一歩にしたい。厚生労働省の審議会が最低賃金引き上げの目安を示す都道府県別の区分の見直しを決めた。現行方式になった1978年度以来、初めての変更で、地域間格差を是正し、最低賃金を底上げすることをねらう。
都道府県をA〜Dの4つに分けていたのをA〜Cの3つに再編する。目安額はAからDにかけて低くなるのが一般的で、差が開く一因になってきた。東京の時給が1072円なのに対し、最も低い青森や沖縄などは853円だ。
Bランクは28の道府県が入る。中間層を厚くすることで全国平均は押し上げやすくなる。最低賃金を決める地方審議会は、中央が示す目安額にできるだけ上乗せすることが一段と重要になる。
最低賃金の1.1倍未満で働く人は1割強とされる。とりわけ人材獲得のための賃上げ競争が首都圏ほど激しくない地方では、最低賃金による底上げが重要だ。
地方の賃金格差の縮小は県外への労働力の流出を防ぐためにも欠かせない。最低賃金に近い水準で働く非正規の待遇を改善することで賃金と物価がともに上昇する好循環を実現したい。
日本の最低賃金は欧州主要国の6〜7割にとどまる。政府は目標としてきた全国平均1000円を今年度中に達成させ、次に目指す水準も議論したい考えだ。雇用への影響を考慮し、無理なく引き上げられる手段も併せて検討すべきだ。英仏などのように若年層で減額する国もある。
最低賃金の持続的な引き上げに欠かせないのは企業の生産性向上だ。特に地方の中小企業は賃上げの負担も大きいが、業務の効率化と事業構造の改革の余地も大きい。大企業は中小がコスト増を適正に価格転嫁できるよう、取引条件の改善に取り組む責任がある。
政府は不振企業を延命させるのではなく、経営改革に挑む中小を後押しすべきだ。成長分野へ人が円滑に移れるよう労働市場を改革するのが最優先課題である。