バンブーズブログ

社会の大きな流れは新聞のトップニュースに掲載されます。 その情報を読み続けていくと数年先が見えてきます。それは怖いものなしです。

[社説]マイナンバーカードの活用を止めるな


 
 
#社説
2023/5/25 2:00
マイナポータルで自分の個人情報が適切に管理されているか確認したい
マイナンバーカードを活用したシステムで個人情報が他人に知られてしまう問題が相次いでいる。個人情報の保護が重要なのはいうまでもない。しかし、だからといって遅れている行政のデジタル化を止めるわけにはいかない。

原因は人為的ミスやシステムの不具合だ。今はマイナンバーカードの普及や用途拡大を急ぐ時期にあり、人手不足などで現場の対応が追いついていない面もあろう。過渡期に想定されうるトラブルとはいえ、今後も運転免許証などに用途は広がる。しっかり原因を究明し、対策を講じてほしい。

人為的ミスでマイナンバーカードの情報を別人とひも付けてしまう問題は、保険証や公金受取口座の登録で起きた。

保険証はひも付けする健康保険組合が本人確認を十分にせず、取り違えた例が7千件余りあった。本人確認は氏名、カナ、性別、生年月日、住所の5情報で照合すれば間違えることはほぼないが、住所まで照合していなかった。

公金口座では自治体職員が機器の操作を誤った。いずれも基本を徹底していれば防げたミスだが、現場は人員が十分でないところもある。チェック機能をシステムに持たせるなど現場の作業に目配りした仕組みが必要だろう。

システムの不具合は、富士通の子会社が運用するコンビニ交付で起きた。デジタル庁はサービスを止めて一斉点検を求めたが、コンビニ交付は全国で月300万枚近い利用がある。サービスへの影響を極力抑えるようにすべきだ。

一連の不手際は公表も遅れた。個人情報は分散管理が基本で自治体に大きな責任がある。住民の生命や財産にかかわる重い責務であり、ミスは自治体が自ら公表すべきだ。国民も自分の情報が適切に管理されているか、マイナポータルで確認するなど自衛したい。

国は情報漏れが起きても、いたずらに不安が広がらないよう、制度の安全と信頼の確保に努めねばならない。マイナンバーカードの申請が人口の77%に達した背景には行政効率化への期待があり、効果を目に見える形で示して国民の納得を得ることも重要だ。

日本社会は行政に無謬(むびゅう)性を求め、問題が起こるとゼロリスクを唱えて立ち止まりがちで、デジタル化を遅らせる一因になってきた。試行錯誤を許容し、よりよい社会をめざす意識がデジタル社会の基盤を強くする。