バンブーズブログ

社会の大きな流れは新聞のトップニュースに掲載されます。 その情報を読み続けていくと数年先が見えてきます。それは怖いものなしです。

[社説]「裁判記録は公共財」の徹底を


 
 
#社説
2023/5/29 19:00
最高裁は裁判記録の廃棄問題について小野寺真也総務局長㊥らが謝罪した(25日)
各地の裁判所が重大な少年事件などの記録を廃棄した問題で、最高裁が調査結果と再発防止策を公表した。

記録に関する最高裁の不適切な対応が原因だったとして謝罪した。組織全体で「裁判所の記録は公共財産である」という認識を徹底し、失った信頼を回復しなくてはならない。

昨年、神戸連続児童殺傷事件をはじめ重大な少年事件や民事訴訟の記録が廃棄されていたことが相次いで発覚し、有識者委員会が経緯などを調べていた。

最高裁は内規などで、社会的に注目された事件などを事実上の永久保存に当たる「特別保存」とすると定めている。

裁判や少年審判の記録は事件の背景を探ったり、同種事件の抑止に役立ったりする可能性がある。少年事件では本人の更生などに配慮して閲覧可能な人や期間が限定されるものの、記録が失われれば将来にわたって検証や研究に生かす道が閉ざされる。

最高裁が廃棄された約100件を調べたところ、重大事件の記録が保存されているとの認識さえないケースが多かった。保管スペースが限られることから、最高裁が特別保存が増えるのを防ぐよう求めたため、「原則廃棄」の考え方が強まったという。

裁判記録は公文書と同じような価値を持つのに、最高裁を頂点とする組織全体でその重みを軽んじていたことは、社会や歴史に対してあまりに無責任である。

今後は「国民共有の財産」との理念を組織内で共有し、保存の適否を助言する第三者委員会を設置するという。当然の対応であり、すみやかに実現すべきだ。裁判官や職員の意識も根本的にあらためる必要がある。

現在は紙の書類を裁判所内の記録庫で保管しているが、司法分野のデジタル化が進めば物理的な制約は大幅に小さくなる。将来的にはプライバシーやセキュリティーに配慮しつつ、原則すべての記録の保存を検討すべきだ。