バンブーズブログ

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[社説]会計改革は国際的な視点で


 
 
#社説 #オピニオン
2023/6/3 19:00
日本の株式市場で存在感を高める外国人投資家は、会計基準の国際化を促す
金融庁の審議会で、会計基準の国際化に関する議論が始まった。海外投資家の日本企業への注目は高まっている。企業価値を測る物差しともいえる会計基準も国際的に違和感のないものとし、資本市場の質を高めていきたい。

2日開催の企業会計審議会会計部会の議論で、焦点のひとつとなったのが「のれん」だ。純資産を上回る価格で企業を買収した際に生じる無形資産だ。

実態の分かりにくい資産であり、日本の会計基準は一定期間での償却を求める。一方、米国の会計基準や、日本での使用も広がっている国際会計基準IFRS)は、被買収企業の価値を計算して下がった時に減損処理をする。

一般に日本基準は買収当初の償却コストが重い半面、財務の健全性は保たれやすい。IFRSは企業買収を進めやすくなるが、損失が突然発生する場合があり、厳しいリスク管理が要る。

日本では250社強、時価総額にして4割強がIFRSを採用する。同じ「日本企業」でも、会計基準の違いにより利益表示や財務リスクが異なっている。

こうした混乱の芽を摘むため、日本の会計関係者はIFRSを作成する国際組織に、財務の健全性などの観点から償却方式の採用をはたらきかけたが、議論の末に見送られた経緯がある。

これを受け、日本基準をIFRSに近づける必要性を指摘する声がある。会計部会では東京証券取引所などがIFRS使用をさらに促す案も聞かれた。

どんなかたちにせよ、市場の国際化を展望すれば、買収という重要な経営戦略にかかわる会計基準の差異を放置しておくのは、得策ではないだろう。

日本は世界の趨勢を意識して会計改革を進めてきた。最近の例では、リース取引が挙げられる。今回も国際的な視点での議論を望む。もちろん、一方的に追随するのではなく、会計に関する日本企業の考え方を欧米に伝える努力も続けなければならない。