バンブーズブログ

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[社説]米議会は経済を人質にとる悪弊と決別を


 
 
#米債務上限 #社説
2023/6/4 2:00
米国分断の修復へ超党派の合意形成が欠かせない(5月22日、ホワイトハウスで会談した与党・民主党のバイデン米大統領㊨と野党・共和党マッカーシー下院議長)=AP
世界経済を導く米国の国債が史上初の債務不履行(デフォルト)に陥る惨事は避けられた。バイデン大統領と野党・共和党マッカーシー下院議長の合意を受け、連邦政府の債務上限の効力を2025年1月まで止める財政責任法案が議会の上下両院で可決した。

世界経済を揺るがす不安要因が、ようやく遠のいた。一方で不毛な政争が民主主義を主導する立場にある米国への信認を低下させたのは明白だ。自国ばかりか世界の経済を人質にとるような悪弊から決別するよう、米国の政府や議会に強く求めたい。

米国は政府の借金の限度額を法律で定める。新型コロナウイルス対策などの影響で債務は1月に31.4兆ドル(約4400兆円)の上限に達した。歳出削減を迫る共和党と現行政策を維持したい民主党の対立で、5日にも政府の資金繰りが行き詰まる懸念が生じた。

11年に米国債が格下げされた時と同様に金融市場の大混乱が予想された。インフレ退治に腐心する米欧の経済など世界の景気を冷やす恐れもあった。バイデン大統領は外遊日程の短縮を余儀なくされた。混迷が通貨や外交の面で米国の信用力に傷をつけた。

与野党社会保障や国防費以外の歳出を抑え、低所得者向け食料支援の条件を厳しくする妥協案に土壇場で合意した。10年で1.5兆ドルの財政赤字圧縮が見込まれる。債務上限の停止を24年11月の大統領選挙の先までとして、政争の具にしないのは妥当な判断だ。

グローバル化に伴う貧富の差の拡大、ネット空間での偏った主張の増幅などを背景に、米国の分断は深まる一方だ。今回も与野党内の双方に妥協への強い反発が起きた。それを乗り越え、超党派で経済や財政の安定へ一致点を見いだしたことは前進だと評価できる。

2日に演説したバイデン大統領は「我々は経済の危機と破綻を回避した」と自賛し、マッカーシー議長も「我々は歴史をつくった」と歳出削減の成果を強調した。問題は今回の混乱に対する反省と合意が得られた実績を、分断の修復に生かせるかどうかである。

財政規律を保つための枠組みは欠かせない。米議会は誠意ある協議で理性的にその解決策を見いだす努力を続けてほしい。内向きの政争で人為的に経済を悪化させ、民主主義の混乱を露呈すれば、中国やロシアなどの強権国家を喜ばせるだけだ。