[社説]介護保険料の上昇抑制へ改革を急げ
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2024/5/20 2:00
介護サービスは高齢期の暮らしに欠かせない支えだ
介護保険料の上昇が止まらない。65歳以上の高齢者が納める保険料が4月に見直され、2024〜26年度の基準額は全国平均で月6225円と過去最高を更新した。21〜23年度から3.5%増え、介護保険ができた00年度と比べると2.1倍に膨らんでいる。
介護保険料は40歳以上の現役世代の負担も年々重くなっている。25年には「団塊の世代」が全員75歳以上になり、介護サービスの需要はさらに大きくなる。保険料の上昇を抑え、負担可能な水準にとどめるため、介護予防やサービスの効率化を急がねばならない。
高齢者の保険料は3年に1度、各市区町村や広域連合が見直す。今回は全体の45.3%の自治体が基準額を上げた。実際の保険料は基準額をもとに所得水準などを反映して算出される。
保険料は地域間でばらつきがあり、最高の大阪市は月9249円と、最低の東京都小笠原村(3374円)の約2.7倍となった。大阪市が高額なのは一人暮らしの高齢者が多く、サービスの需要が大きいのが要因とみられる。
保険料の上昇を抑えるために最も重要なのは、介護費用の膨張を抑制する取り組みだろう。なかでも、介護予防を通じて介護が必要になる人の増加を抑えることが欠かせない。介護サービスを利用せずに過ごせる期間が増えれば、本人にも制度にもプラスだ。
介護サービスを効率的に提供する工夫も追求すべきだ。高齢者の見守りに有効なセンサーなどのテクノロジーをうまく活用することで、介護の質を高めつつ、費用を抑える成果を上げた施設も現れている。こうしたノウハウを全国各地の事業者に広げたい。
介護は一つの法人が1施設を運営するケースが多く、規模の効果が働きにくい。合併などによる統合・再編のほか、各法人の主体性を保ちながら協業を進める連携推進法人の枠組みも活用して、コスト削減を目指してほしい。
原則1割となっている利用者負担の見直しも急務だ。2割負担を求める対象者の拡大は長年先送りされてきた。資産の保有状況も踏まえて負担能力を判断する仕組みを導入し、早く実施すべきだ。
介護従事者の確保には処遇改善が必須なので、人件費の上昇は今後も続くとみるべきだ。医療の効率化で浮いた財源を介護に回すなど、医療と一体の改革で保険料上昇をなるべく抑えてほしい。