[社説]脅威下で日韓防衛協力を前に
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2024/6/3 19:00
木原稔防衛相(左端)と韓国の申源湜国防相(右端)の会談で、自衛隊と韓国軍の幹部が握手を交わした(1日、シンガポール)
シンガポールで会談した日韓防衛相が2018年末に発生した自衛隊機へのレーダー照射問題の再発防止策で合意し、防衛交流の再開も申し合わせた。脅威が高まる安全保障環境を直視すれば妥当だ。米国と同盟を結ぶ両国が防衛協力を前に進めるときである。
日本海の能登半島沖で自衛隊の哨戒機が韓国軍の駆逐艦から火器管制レーダーを照射されたのは極めて危険な行為だ。一方で韓国側はこれを否定し、逆に自衛隊機の低空飛行を問題視した。双方の主張が平行線のまま相互不信がこじれる深刻な事態に陥っていた。
合意は、他国の艦艇や航空機と洋上で遭遇した際にとるべき行動規範を順守する内容だ。照射の事実認定を棚上げし、自衛隊などには不満も残るだろう。それでも日韓のトゲとして刺さっていた懸案に区切りをつけ、協力関係の強化を優先した判断は理解できる。
同時期に開いた日米韓防衛相会談では、3カ国の共同訓練の対象地域を従来の北朝鮮から「朝鮮半島とインド太平洋地域」まで広げると決めた。各国で政権交代がなされた場合でも3カ国連携が途絶えないよう安保協力を制度化する。日韓の合意もその一環だ。
日米韓は海空やサイバーなどにまたがる新訓練を今夏に実施する。安保は一番弱いところから崩れていくといわれ、歴史問題を抱える日韓が敵の標的になる恐れがある。両国のあいだで外務・防衛担当閣僚会議(2プラス2)の創設も検討してはどうか。
北朝鮮は最近、「超大型放射砲」を18両の発射機から一斉射撃するなど攻撃力を誇示した。核・ミサイルのほか軍事偵察衛星の保有にも執着する。日韓の周辺ではさらに中国が軍事力を増強し、ロシアのウクライナ侵略も続く。
日本の防衛は三正面作戦を強いられる状況ともいえ、軍事力の強化が著しい隣国の韓国と手を携える意義は大きい。国防の最前線ではわずかな隙が致命傷になる。日米韓の信頼関係を深めて地域安保に万全を期してほしい。た