[社説]原子力規制委の「不適合」判断は重い
#社説 #オピニオン
2024/7/26 20:00
日本原子力発電敦賀原発2号機
原子力規制委員会は26日の審査会合で、福井県の敦賀原発2号機の原子炉真下に活断層が走る可能性を否定できないと結論づけた。原子炉が活断層の上にないのが安全確保のための大原則で、同原発は再稼働の道を閉ざされる。
2011年の東京電力福島第1原発事故以降、電力各社が原発を動かすには新規制基準をクリアしなければならない。これまでに27基が申請し、17基が合格した。敦賀2号機は初の不適合となる。事業者の日本原子力発電は今回の判断を重く受け止めねばならない。
審査では敷地内を通る「K断層」が活断層か、原子炉建屋の下まで延びているかが焦点だった。規制委は日本原電の提出資料などを精査し、いずれの可能性も否定できないと判断した。
日本原電側は追加調査を行って資料を提出し直すと主張し、短期間での審査打ち切りに抵抗してきた。しかし15年に再稼働を申請した後、資料の書き換えなどが発覚し、審査を2度も中断させた責任は同社にある。規制当局の不信感は解消されず、原発事業者としての資質も問われたといえる。
廃炉にするかどうかの判断は事業者に委ねられる。審査の再申請も可能だ。ただ不適合と判断された原発を長期間放置しておくのは安全上も問題だ。同社は早急に対応方針を示す必要がある。
原発専業の日本原電は民間とはいえ特殊な会社だ。1966年に国内初の商業炉の東海原発を稼働させ「国策民営」で歩んできた。日本の原子力政策の象徴的な存在だ。同社は茨城県の東海第2原発も保有するが、こちらも再稼働の見通しは立っていない。
廃炉となれば費用をどう確保するか。計画している敦賀原発3〜4号機の新設は進められるのか。その場合、事業形態は今のままでいいのか。課題は山積している。
電力の安定供給と脱炭素を両立させるため、岸田文雄政権は原発再推進へ政策を反転させた。国は電力各社と協力し、日本原電のあり方を再検討する責務がある。