[社説]デブリ採取を廃炉への一歩に
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2024/8/25 2:00
福島第1原発2号機のデブリ採取作業は準備段階で中断された =共同
東京電力ホールディングスが福島第1原子力発電所で溶け落ちた核燃料(デブリ)の試験採取を始める。成功すれば原子炉内の様子を知る貴重な手掛かりが得られ、廃炉への一歩となる。
だが作業初日に人為的ミスで早々に中断を余儀なくされ、前途多難を印象づけた。強い放射線を出すデブリの取り出しは、廃炉で最も重要かつ最難関の工程だ。ミスの原因と対策を明らかにし、安全を最優先に進める必要がある。
福島第1原発1〜3号機は2011年の東日本大震災で炉心溶融(メルトダウン)を起こし、溶けた核燃料が炉内構造物と混ざってデブリとなった。推計で880トン存在するとされる。少量でも採取し、解析すれば、今後の取り出し方法の検討に生かせる。
当初は21年中に開始する予定だった。ところが機材開発の遅れに加え、原子炉格納容器への貫通部が堆積物で塞がれているのが分かり、3年近く遅れた。
今回は2号機の格納容器の側面から釣りざおのような長いパイプを挿入し、先に垂らしたケーブルの爪状の装置で小石状のデブリをつまんで取り出す方法を用いる。22日の作業では、パイプを接続する順番に誤りが判明した。
パイプを格納容器内に押し込む前だったため、放射線漏れなどの重大な事態は起きなかったが、初歩的なミスに不安を禁じ得ない。未知の作業だけに、今後も想定外の問題が起きる可能性はある。作業の体制や手順を改めて点検し、慎重に進めてもらいたい。
国と東電は11年に定めた工程表で51年までに廃炉を終えるとする。ただすべてのデブリを取り出して放射性物質を完全に除去できるか、現段階ではっきりしない。
福島では当初は将来にわたって居住できないとされた帰還困難区域にも住民が戻り始めた。この地域の復興は、廃炉の行方と不可分だ。国と東電はデブリの解析で分かる情報を正確かつ迅速に公開し、廃炉と復興の進むべき姿の議論につなげなければならない。