[社説]共生社会の道探るパラ大会に
#パリ2024 #社説
2024/8/29 2:00
パラリンピックを通じて共生社会への道筋を探りたい(パリ・エッフェル塔前のパラ大会のシンボルマーク)=共同
ハンディキャップを背負いながら限界に挑む障害者アスリートの姿は、世界で興奮と感動を呼んできた。幕が上がるパリ・パラリンピックでも、その躍動に期待する。共生社会への道筋やヒントを探る契機にしたい。
史上最多の167の国・地域と難民選手団が参加し、約4400人が出場予定だ。日本勢も海外開催で最多の175人が参加する。
パラリンピックは第2次世界大戦で負傷した軍人のリハビリの一環で開かれたスポーツ大会に源流がある。そのため当初はリハビリの延長という印象が強かった。
だが近年は選手が高いレベルでぶつかり合う競技大会としての性格が際立つ。3年前の東京大会でも、力強く正確なプレーに息をのんだ人は多いだろう。純粋にスポーツとして楽しめることは、障害者を包摂する社会を目指すうえで大きなプラスになろう。
パラへの関心が高まった結果、ボッチャのように知名度が上がった競技をシニア層が楽しむといった光景も見られるようになった。好ましい流れといえる。
2011年制定のスポーツ基本法に障害者スポーツの推進が盛り込まれたことや、多様性への配慮を背景に、企業がパラ選手を支援する動きも広がっている。もっとも、注目が集まるのは一部の有名選手にとどまりがちとの指摘もある。より多くの選手に幅広い支援が届くことが望ましい。
国連はパラ大会の期間中も休戦を促す決議を採択している。だがウクライナやガザ地区での戦闘は止まっていない。途上国では障害者スポーツの推進体制が整いにくいともいわれる。大会を通じて、国際的な課題に改めて目を向けることも欠かせない。
「人間の可能性の祭典」といわれるパラリンピックの価値は▽勇気▽強い意志▽インスピレーション▽公平――とされる。いずれも共生社会の実現に重要な要素だろう。障害の有無を越え、誰もが個性を生かして活躍できる世の中に向けて着実に歩みを進めたい。