[社説]国家像と政策の論戦をさらに深めよ
党首選2024
#自民党総裁選2024 #社説
2024/9/14 19:05
財政健全化へのスタンスは濃淡がある(14日、東京都千代田区)
自民党総裁選の立候補者による日本記者クラブ主催の討論会が14日に開かれた。9人の候補のスタンスが異なる重要課題が少なくなく、次期衆院選までにらんで国民に多様な選択肢を示したのは意義がある。骨太の政策論議をさらに深めてほしい。
まず問われるのは政治とカネの問題だ。各候補は、政党が議員に渡す政策活動費の廃止など政治資金の透明化を訴えた。石破茂元幹事長は派閥の裏金問題について「人々は全く納得していない」と述べ、総裁が先頭に立って実態解明を進めるべきだとした。
高市早苗経済安全保障相は日銀の利上げについて「はっきり言うと早い」と主張した。茂木敏充幹事長は岸田政権が決めた防衛増税と子育て支援金の追加負担は、経済成長による税収増や外為特会の活用などで賄えるとし「増税ゼロ」の公約を繰り返した。
これに対し、河野太郎デジタル相は「金利が上がっていくなかで政府債務の利払いが増えていく。財政はもう少しシビアにみていかなければいけない」と述べた。労働市場の流動化に向けた解雇規制の見直しや選択的夫婦別姓の導入でも意見が割れた。
経済成長を重視するのは当然である。一方で、国民の将来不安に正面から向き合い、財政の持続性を高めていくのも政治の責務だ。安定的な財源の確保策から逃げていては指導者としての力量を見透かされる。
中国や北朝鮮との向き合い方では、小泉進次郎元環境相が首脳会談による事態打開を提起したが、どの候補も具体的な道筋は示せていない。衆院選の時期に関しては小泉氏が早期の衆院解散を表明したのに対し、石破氏は予算委員会を開いて国民に判断材料を示す必要があるとした。
個別の政策分野では活発な議論が展開されたが、日本をどんな国にしたいのか、何が必要なのかといったビジョンがあまり聞かれなかったのは残念だ。
候補者は過去最多で、一人ひとりの発言時間には限りがある。今回は憲法改正に触れられず、突っ込んだ議論にもなりにくいのは否めない。それでも総裁選は実質的に首相を決める場であり、国家像や政策をぶつけ合う好機である。27日の投開票に向け、さらに活発な政策論議を期待したい。