[社説]日本語が学びやすい環境を
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2024/9/17 2:00
日本語能力を高めたい技能実習生は多い
日本に在留する外国人が安定して生活し、社会に溶け込むには日本語の習得が欠かせない。政府は外国人労働者の受け入れを拡大する以上、日本語が学びやすい環境づくりを急ぐべきだ。
6月に閉幕した通常国会で、技能実習に代わる育成就労制度の導入が決まった。日本語の能力や技能を段階的に高め、長く日本で活躍してもらうことを目指している。ただ日本語を学ぶ環境が整備されているとは言いがたい。
技能実習生を受け入れる中小企業では、日本語学習の機会を十分に提供できていないところが目立つ。意思疎通を図るうえで必要性は感じているものの、自社で教えるには負担が大きいためだ。
社外でも学ぶ場所が不足している。日本語教室のない「空白地域」は2022年時点で全市区町村の44%にのぼる。オンライン講義も活用して空白地域を減らしていくことが急務だ。
ドイツは政府主導で教室の配置を進め、受講料の大半を国が負担する。最低賃金に近い水準で働く技能実習生が自費で日本語を学ぶのは負担が大きい。学習にかかる費用を国と自治体、企業がどう分担すべきか、日本も検討する必要があるだろう。
さらに心配なのが、日本語で日常会話が十分にできない子供たちの増加だ。文部科学省の調査によると、日本語指導が必要な小中高生は23年度時点で約6万9000人に達し、12年度時点の2倍になった。このうち1割の子供が特別な指導を受けていない。教師が不足しているためだ。
三重県桑名市では複数の小中学校をタクシーで回り、日本語指導教室まで生徒を送迎している。他の自治体も近隣の市町村で連携するなど工夫の余地はあるはずだ。
定住する外国人家族が日本語が不慣れなままでは、地域社会で孤立することになりかねない。これまでのように自治体やボランティアに頼るばかりでは地域差も生じ、限界がある。政府が前面に立って施策を進める必要がある。