[社説]社会保障の改革は負担論から逃げるな
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2024/10/20 2:00
各党は超高齢社会を支える社会保障制度のあり方をもっと語るべきだ
今後の日本社会の変化を見据えれば衆院選でもっと骨太の議論がされるべきだ。超高齢社会を支える社会保障制度のことである。
「団塊の世代」の全員が75歳以上に達する2025年は間近だ。医療や介護のニーズが大きい後期高齢者が65歳以上人口の過半を占める、重老齢社会とも呼ぶべき時代が本格的に到来する。
衆院選に臨む各党が語るべきはこうした人口動態の推移に正面から向き合う国家戦略のはずだ。
にもかかわらず、この選挙戦で社会保障に関する議論はあまりに低調だ。各党の公約は足元の物価高を名目とした負担軽減策などが目立つ一方、負担増など痛みを伴う改革への言及は少ない。
若い世代が減る日本は、増え続ける高齢者をどう支えればよいのか。年金、医療、介護は持続できるのか。確かなのは、高齢者を一律に弱者と位置づけるのをやめ、能力がある人には支える側に回ってもらわないと、この難局は乗り切れないということだ。
自公政権が推進してきた「全世代型社会保障」にはこうした考え方があるはずだが、両党の公約に能力のある高齢者に負担を求める具体案は入っていない。高齢者の医療費負担を原則3割にするとした日本維新の会と対照的だ。
高齢者の負担能力を見極めるには所得だけでなく保有資産を勘案する必要がある。だがこの点に触れたのは国民民主党だけだ。
現役世代の保険料負担を抑えるには医療や介護を効率的に提供する改革も不可欠で、デジタル化は有力な手段のはずだ。日本共産党やれいわ新選組はマイナンバーカードと健康保険証の統合に反対するが、それならデジタル化を進める別の道筋を示してほしい。
年金に関する主張からも各党の熱量が伝わらない。維新は世代間扶養から積み立て方式への移行、立憲民主党は専業主婦らが入る第3号被保険者制度の見直しを掲げた。だが制度の根幹を変える改革にもかかわらず、具体性はない。
立民と国民民主、維新は減税と給付金を組み合わせる給付付き税額控除の導入を主張するが、財源案をしっかり示すべきだろう。
社会保障の財源として消費税率を上げる超党派の議論もいずれ必要になるのではないか。各党は高齢化が進む日本社会の進路をもっと真剣に語るべきだ。
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