[社説]北朝鮮は世界の対立深めるな
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2024/10/23 2:00
ロシアと北朝鮮は6月の首脳会談で有事の相互軍事支援を明記した新条約を締結した(平壌)=AP
北朝鮮が世界の緊張をあおる動きに拍車をかけている。軍事境界線近くの道路を爆破したのに続き、韓国の情報機関は北朝鮮の部隊がロシア軍に派遣されたと発表した。国際社会の対立も深める蛮行を厳しく非難する。
北朝鮮は憲法改正で韓国を「敵対国家」と位置づけて尹錫悦政権との対決姿勢を先鋭化している。南北を貫く道路や線路の遮断は金正恩総書記が掲げる「統一政策の放棄」を具現化する措置だ。
韓国が無人機を平壌に飛ばして領空侵犯したとも主張し、前方の砲兵部隊に射撃準備の通達を出した。追加の挑発があれば攻撃も辞さない構えをみせ、偶発的な衝突が危ぶまれる。
韓国の国家情報院によれば、北朝鮮の特殊部隊1500人あまりがロシア軍の部隊に駐屯している。派兵規模は総勢1万2000人に上ると推定される。ウクライナのゼレンスキー大統領も北朝鮮が1万人規模の兵士らをロシアに送り込もうとしていると語った。
北朝鮮が6月にロシアと結んだ条約は有事の相互軍事支援を含む。ロシア軍への派兵が事実とすれば、ウクライナ侵略への参戦にほかならない。戦争を助長する由々しき事態で到底許されない。
北朝鮮には自ら開発した兵器の性能試験や兵士の実戦経験を積む機会に利用する打算もあるのだろう。ロシア支援の見返りに高度な軍事技術や食糧などを受け取っている可能性があり、韓国や日本の脅威が増す恐れがある。
北朝鮮指導部は体制維持のため海外の情報や文化の流入を極度に警戒する。一連の行為は住民を統制し結束を図る狙いもみえる。
衆院選のさなかだが、危機への抑止力と有事の対処力の備えを怠ってはならない。北朝鮮がロシアを後ろ盾に挑発をエスカレートさせる懸念があり、米韓をはじめ同志国との連携を強めるべきだ。
中国は北朝鮮によるロシアへの急接近や道路爆破が地域の緊張を高めると憂慮しているようだ。中国への働きかけも有効である。