3つのポイント
2024年11月13日 5:00
楽天グループは13日午後3時半、2024年1〜9月期の連結決算(国際会計基準)を発表する。三木谷浩史会長兼社長らが出席する決算説明会も開く予定だ。業績全体の足を引っ張る携帯電話事業の成長ピッチはどうか、悲願の黒字化への道筋は示せるか。注目ポイントをまとめた。
INDEX
TOPIC1
見えるか携帯の単月黒字
TOPIC2
17四半期ぶり最終黒字も
TOPIC3
強まる競合の包囲網
TOPIC1
見えるか携帯の単月黒字
携帯事業の契約回線数は右肩上がりだ。三木谷氏自らが先頭に立って「どぶ板営業」をかけ、法人契約が拡大している。通信品質の改善やデータ使い放題の料金プラン「Rakuten最強プラン」が支持され、若年層の利用者も増えている。
契約数は24年4〜6月期末時点では688万件と1年間で44%増えた。24年7〜9月期末は800万件が近づく。24年7〜9月期は契約数の増加が寄与し、携帯事業の部門営業損益は赤字幅(前年同期は812億円の赤字)が縮小する公算が大きい。
楽天モバイルの発表会に出席した三木谷氏(6月、東京都世田谷区)
携帯事業では24年内にEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)ベースでの単月黒字化を目標に掲げる。月間営業費用を従来と変わらない230億〜250億円と仮定した場合、契約数は800万〜1000万件、ARPU(1契約あたりの月間平均収入)は2500〜3000円が必要になる。
課題はARPUだ。24年4〜6月期は2021円と3四半期ぶりに上向いた。それでも2000円前後で足踏みしており、必要条件に据える2500〜3000円は遠い。24年7〜9月期も上昇基調が続くかが焦点になる。
アナリストからは「ARPUを引き上げるため、金融サービスなどと連携した施策を期待したい」との指摘が上がる。強固な「楽天経済圏」から携帯事業への送客などがカギになる。悲願の単月黒字化に向け、三木谷氏が描く戦略に注目が集まる。
TOPIC2
17四半期ぶり最終黒字も
楽天Gは20年4月に携帯事業に本格参入した。売上高にあたる売上収益の押し上げには貢献したが、基地局整備への設備投資などが重荷となり、最終損益は20年7〜9月期から24年4〜6月期まで16四半期連続の赤字だ。この間の累積赤字額は1兆円を超える。
24年7〜9月期は潮目が変わるかもしれない。事前の市場予想平均(QUICKコンセンサス)では、最終損益は166億円の黒字に浮上する見通し。携帯事業の部門赤字が縮小することで、好調な電子商取引(EC)事業や金融事業の利益で補いきるとの見立てだ。
弱い財務も改善が進む。携帯基地局の整備に投じた計1兆円超の多くは社債で賄ってきた。約4700億円の償還を控えていた25年の「リファイナンス(資金の借り換え)は調達済みだ」(広瀬研二最高財務責任者)。26年の償還は約1600億円でピークを越える。
保有資産を売却して借り直す「セール・アンド・リースバック」の活用などで資金調達も進める。9月には虎の子の子会社、楽天カードがみずほフィナンシャルグループから出資を受けることについて協議入りすると公表した。
TOPIC3
強まる競合の包囲網
吹くのは追い風ばかりではない。楽天Gの「最強プラン」を切り崩そうと、NTTドコモなど競合3社は低価格帯プランを充実させている。
ドコモは10月にオンライン手続き専用の「ahamo(アハモ)」を見直した。料金は月2970円で据え置きつつ、利用可能データ量を月30ギガバイト(GB、ギガは10億)と従来から10GB増やした。
KDDIも10月中旬、UQモバイルで新たに「コミコミプラン+」を投入すると公表。利用可能データ量は月33GB(特典付き)で月3278円とする。従来の「コミコミプラン」は20GBで3278円だった。
ソフトバンクも動いた。10月からLINEMO(ラインモ)で対象プランを契約すると、月2970円(通常は3960円)で30GBまで使えるようにした。当初は6カ月間限定のキャンペーンの想定だったが、10月下旬には通常プランに格上げすると発表した。
ソフトバンクの宮川潤一社長は「元気の良い会社がいる間は動きが続く」と説明。ドコモの前田義晃社長は「(既存の料金プランを)さらにバージョンアップすべきか考えていく」と語る。競合の包囲網が強まるなか、楽天Gは今の勢いを維持できるかどうかの正念場を迎える。