[社説]免税品販売で店の負担減らせ
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2024/12/3 2:00
外国人観光客らで混雑する関西国際空港の到着ロビー
観光庁が2025年度の税制改正で、食品や飲料などについてインバウンド(訪日外国人)向け免税販売の上限額や包装に関する規制の廃止を求めている。販売店の負担を減らすとともに消費額を増やすのが狙いだ。
訪日客の消費で物販分野は宿泊などに比べ新型コロナウイルス禍からの回復が遅れている。販売手続きの簡素化を通じ、消費の拡大を後押ししたい。
訪日客は現在、国外に持ち出す物に限り、免税店で消費税を払わずに購入できる。対象は生活に使うものとされ、バッグや家電など「一般物品」と食品、飲料、化粧品などの「消耗品」に分かれる。消耗品については1人1日1カ所の購入額が50万円までに制限されている。
近年、高額な日本の酒、化粧品などを購入する訪日客が増えている。上限額の規制は販売の支障になっているのではないか。一般物品との扱いに差がなくなれば、レジでの確認や分別包装、その後の事務処理など販売現場の作業負担はだいぶ減るはずだ。
免税品制度では外国人が購入後に日本国内で転売し、利ざやを稼ぐ問題が浮上している。税制改正では店でまず消費税を払い、出国時に現物を確認した後に払い戻す諸外国と同じ返金(リファンド)方式への変更も要望している。
販売時点で消費税を減免するのは、消費税導入前の物品税時代から続く方法だ。当時に比べ訪日客数は大幅に増え、免税品の対象も広がった。免税店の数も年々増加している。店舗の負担を減らし、小売業が免税品販売にもっと参入しやすくすべきだろう。
2023年の訪日消費の内訳で物販は1兆4043億円(構成比は26.5%)だった。大きな柱だが、新型コロナ前の19年の1兆6690億円(同34.7%)を下回った。宿泊費、飲食費などは19年実績を上回っている。ホテル代が高騰した影響もあろうが、物販も工夫次第で伸びしろはある。税制改正をその一助にしたい。