[社説]東京大学は縦割り組織の悪弊絶て
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2026/1/29 19:00
極めて異常で残念な事態だ。東京大学の医学部付属病院で皮膚科長を務めた教授が共同研究の相手方から賄賂を受け取った疑いで逮捕された。医学部では別の収賄事件で同病院医師の准教授が昨年12月に起訴されたばかりである。
東大は28日に記者会見を開き、藤井輝夫学長が「社会の信頼を著しく損ねた」と陳謝。再発防止に向けた学内改革に「不退転の決意で取り組む」と述べた。
藤井氏は不正の把握が遅れた背景に医学部、病院、診療科といった組織間の壁や閉鎖性があったとした。縦割り組織の弊害を絶てるかどうかが再生のカギだろう。
会見での説明からは病院のずさんな管理実態が浮かんだ。逮捕された教授(懲戒解雇)は社会連携講座という東大の仕組みを使い、皮膚疾患への大麻成分の有効性などについて贈賄側の日本化粧品協会と共同研究を進めていた。
契約では総額約2億円の研究費を協会などが負担するはずだったが、実際に支払われたのは100万円だった。口座の入金状況をチェックしていれば未払いを見抜けたが、病院側は怠っていた。
教授は本来の研究目的にない化粧品の開発にも協力していた。賄賂の見返りだったと東大は見ている。健康に関わる研究の進行が賄賂でゆがめられていたなら医学研究への不信を招く。東大の経理の正確さにも疑念を禁じ得ない。
教職員の倫理意識が問われる。事件以外に22件の倫理規程違反が見つかり、うち3件は高額な接待などで懲戒手続きに入ったという。東大は綱紀粛正に加え事務管理の不備、内部統制の甘さといった課題を一つ一つ解消すべきだ。
政府が基礎研究重視の姿勢を強め始めたなかでの不正発覚は遺憾だ。東大を10兆円規模の大学ファンドで支援するかどうかの判断が延期されたのはやむを得ない。
民間との共同研究を活発にするには大学側に堅固なガバナンス(統治)の体制が欠かせない。東大と同様の仕組みを持つ大学は運営状況を再点検してほしい。