[社説]武器輸出は明確なルールと歯止めが要る
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2026/3/11 19:05
政府は護衛艦や潜水艦などの輸出を念頭に置いている。写真は「もがみ」型護衛艦(2025年4月、海上自衛隊横須賀基地)
日本の安全保障のありようが大きく変容する。自民党と日本維新の会は殺傷力をもつ武器を含めたすべての防衛装備品の輸出を原則解禁する提言を高市早苗首相に申し入れた。政府は今春にも制度改定を検討しており、輸出ルールの明確化や歯止め策が課題になる。
提言は、輸出できる武器を非戦闘分野の救難、輸送、警戒、監視、掃海に限ってきた5類型を撤廃する。戦闘機や護衛艦、潜水艦など殺傷能力のある武器でも、防衛装備品・技術移転協定を結んでいる国には輸出を認める。
政府はこれまでも国際共同開発や外国のライセンスを用いて生産する武器なら輸出を例外的に認めてきたが、国産品は輸出できなかった。提言は戦闘中の国でも「特段の事情」があれば輸出できる余地を残した。同志国が侵略を受けた場合の支援を想定している。
日本の装備品では、例えばフィリピン、インドネシアなどは中古の護衛艦や潜水艦に関心を示しているという。
輸出の拡大によって同盟・同志国の抑止力や対処力が高まれば地域安保を底上げする。同じ装備品を使っている国とは修理、部品の調達や補給で協力しやすく、安保協力を深めることにつながる。
もう一つの狙いは防衛産業の育成だ。日本は長年、武器輸出を事実上禁じてきたため納入先が自衛隊に限られ生産能力が弱まった。海外に販路を広げることで、生産量の拡大や単価の引き下げを期待できる。企業の撤退リスクが低下し技術・人材の確保も見込む。
中国や北朝鮮の脅威に対応する関係国の連携は重要である。安保環境の変化に応じて輸出のあり方も見直していき、安保の基盤を強めていくのはやむを得ない。
半面、人を殺傷したり物を破壊したりできる装備を輸出して紛争国で使われれば、紛争を助長する恐れがあるとの懸念も根強い。
輸出できるかどうかは与党内の調整を経て政府の国家安全保障会議で判断する構えだ。それで十分か。武器輸出が際限なく広がるのを防ぐための手立てについて与野党で議論を深める必要がある。
自維連立政権の合意書に盛り込んだからといって前のめりになっては禍根を残しかねない。
どんな装備品をどんな理念で開発し輸出するのか、平和国家の歩みに沿うか。事前や事後の国会の関与も含めて国民の理解を得る丁寧な取り組みが欠かせない。