バンブーズブログ

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[社説]イラン弾圧への抗議示したノーベル平和賞


 
 
#社説 #オピニオン
2023/10/8 19:00
 
ノーベル平和賞の受賞が決まったモハンマディ氏=家族提供・ロイター
身の危険にもかかわらず強権的な体制下で自由や尊厳を求めて戦っている人々が世界には数多くいる。その存在を思い起こさせ支援しようとするノーベル平和賞の決定は重い意味がある。

今年の受賞者に選ばれたのはイランの人権活動家ナルゲス・モハンマディ氏だ。現在も国内刑務所に服役中で、過去13回逮捕され、5回の有罪判決を受け、31年の禁錮と154回のむち打ちを言い渡されている。

保守強硬派が支配するイランでは自由の制限と経済的な苦境に国民の不満は高まる。不当にも、指導部はこれを強権で押さえ込もうとしている。

2022年にはスカーフの不適切な着用を理由に拘束された女性が死亡する事件を機に大規模な抗議が広がった。デモの弾圧で数百人が死亡したとされる。ノーベル賞委員会は「差別的で抑圧的な体制に抵抗した数十万の人々を意識している」と述べ、デモ参加者への連帯の意図をにじませた。

現在のイスラム体制につながる1979年の革命は王政統治に不満を持つ民衆デモに端を発している。「締め付けを受ければ受けるほど私たちは強くなる」と述べたモハンマディ氏の言葉の意味をイラン指導部はだれより理解しているはずだ。

力ずくで国民を従わせる手法には限界がある。経済の低迷も指導部が国際協調に背を向け孤立を選んだ代償といえる。

各国はイランの人権状況の改善へ圧力を強める一方、核合意の再建などイランの国際社会復帰でも努力を続けなくてはならない。一見すると矛盾する困難な目標の達成には関係国の一貫した戦略と連携が欠かせない。

ノーベル賞委員会のレイスアンデルセン委員長は「社会正義と人権と民主主義こそが永続的な平和の前提だ」と述べた。これは民主主義を抜きにして経済発展をなし遂げようとする、権威主義体制のリーダーたちへの広い警告でもあろう。