オサムのような不安の強い子どもに対して、「もっとしっかりしなさい!」「もっと頑張れ!」などと言うことは絶対にNGです。「不安なんだね」と、まずは子どもの気持ちをそのまま受け取り、何が不安なのかを聞いてあげましょう。
子どもを注意深く観察して、「気分」「からだの反応」「行動」にかなりのストレスが表れていることがわかったら、無理をさせないように休ませてあげましょう。
「体育会系」の親御さんは、「からだが覚えるまで練習するんだ。そうすれば不安は消える!」といったような、「正論の根性論」をよく言うのですが、不安の強い子どもは、「自分にはそんなことできない」とより一層自信をなくしてしまいます。
本当は試合前に緊張したことなどなかったとしても、「お父さんも子どもの頃は、サッカーの試合前は緊張して足が震えちゃってさ。でもさ、頑張って練習したら、自然にからだが動いてくれたよ」などと、「子どもと自分は一緒である」という体験を伝えてあげましょう。
一見したところ完璧に見える父親が弱い部分を見せることで、子どもの不安は和らぎます。
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「ネガティブ言葉」を「ポジティブ言葉」に変換する
ところで、近年の脳科学研究では、同じことでも「ポジティブに捉えやすい脳」と「ネガティブに捉えやすい脳」では、前頭葉の反応が異なることがわかってきました。
その差異は免疫機能とも関連していて、ネガティブな脳の方がインフルエンザワクチンの免疫がつきにくいという報告もあるほどです。
私たちも、問題を抱えて来られる家族との関わりの中で、ポジティブな考え方を持っている親御さんの方が、トラブル改善の経過が良好であることを実感しています。
子どもも、大人も、物事をポジティブに捉える習慣をつけるために、「おかげさまで」という言葉を口癖にすることをおすすめします。
「おかげさまで」という言葉を日頃から意識的に口にし続けると、だんだん、「~のおかげでいい結果になった」と考えられるようになってきます。もしトラブルが起こったとしても、「おかげさまで、いいこともあった」「おかげさまで、大事なことに気づくことができた」とポジティブに脳が捉えるようになります。
また、親は、「子どものよいところ」を探す練習もするといいでしょう。子どもを見ていてネガティブな言葉が思い浮かんでしまったら、それをポジティブな言葉に変換します。たとえば、「忍耐力がないなあ」と思ったら「切り替えが早いね」というような具合です。
子供は大人の振る舞い、言葉遣いを観察している…
さらに、同じ言葉でも、「言い方」によって伝わり方がポジティブにもなり、ネガティブにもなります。
成田奈緒子、上岡勇二『その「一言」が子どもの脳をダメにする』(SB新書)
にっこりとした表情で高いトーンの声で話すのと、暗い表情で低いトーンの声で話すのでは、同じ内容でも全く印象が変わります。ポジティブな伝え方をするには、表情や声のトーン、話す速さを工夫することも大切です。
親が伝え方のバリエーションをたくさん見せていると、子どもも表情が豊かになり、コミュニケーションがうまくなります。子どもは、大人の言葉や振る舞いをお手本にして育ちます。まずは大人から、ポジティブな振る舞いや言葉遣いを心がけましょう。
また、子どもは不安な気持ちを和らげるために、大人は日々のストレスを解消するために、リラクゼーションのストックを持つこともおすすめします。
特に親は、育児などのストレスがたまりすぎると、それを子どもの前で爆発させてしまうことになりかねません。自分にとってストレス解消になるリラクゼーションは何でしょうか。
「友達とランチをする」「映画館で映画を観る」「お風呂に入る」「アロマをたく」「ジョギングをする」……自分の脳が楽しくなる、癒されることは何かについて考えてみましょう。
親も、子供も、リラックスできる習慣を持とう
誰かと一緒にすること、一人でもできること、外ですること、その場でできること、お金がかかること、無料でできることなど、リラクゼーションにもさまざまなバリエーションがあります。状況や気分に合わせて方法を選べるようにストックを持ちましょう。
さらに親は、リラクゼーションの方法を子どもにも伝えることが大切です。子どもが自分自身でストレスに対応できるように育てていきましょう。
[文教大学教育学部 教授、「子育て科学アクシス」代表 成田 奈緒子、公認心理師・臨床心理士・子育て科学アクシススタッフ 上岡 勇二]