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2023/11/19 2:00
建設が進むアークティック2のLNG生産施設
米政府がロシアへの制裁の対象に、日本勢が参加する液化天然ガス(LNG)の開発・生産事業「アークティック2」を加えた。プロジェクトの事業会社が米国に持つ資産が凍結され、米国人との取引も制限を受ける。
対ロシア制裁で主要7カ国(G7)と歩調をあわせる日本は、制裁対象になった以上、これを順守する必要がある。
アークティック2はロシアのノバテクや仏トタルエナジーズとともに、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と三井物産が計10%の比率で参加している。北極圏のギダン半島で年間1980万トンのLNGを生産し、日本勢は権益比率に応じた約200万トンを引き取る権利を持つ。
米政府は制裁対象に加えた理由について、ウクライナ侵攻を続けるロシアのエネルギー収入を減らすことが目的だとしている。年末にも段階的に生産を始めるこの事業の先行きが厳しくなることを覚悟しなければならない。
ただし、日本のLNG調達が揺らぐことがあってはならない。日本はロシア極東のLNG生産事業「サハリン2」から年間600万トンを輸入している。消費量の1割近くに相当し、LNGの需給逼迫が続くなかで、これが途絶えれば深刻なエネルギー不足に陥る。
ウクライナに続いて中東でも衝突が起きるなど、地政学リスクは複雑化している。サハリン2をこれから生産を始めるアークティック2と同列に論じることはできない。輸入継続へ今後もG7各国の理解を得ていくことが大切だ。
アークティック2についても二次制裁のリスク回避や、制裁の適用除外の可能性について米政府と緊密に交渉しなければならない。
そのうえで多様なリスクにも揺らぐことのないLNG調達網を築く必要がある。脱炭素への長い移行期間中もLNGは役割を持ち続ける。日本は米国やオーストラリアなどの主要生産国との関係を強化し、アフリカや南米といった新たな調達先の確保が重要だ。