バンブーズブログ

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頼清徳台湾総統の中台現状維持は重要

[社説]頼清徳台湾総統の中台現状維持は重要だ
 
 
#社説 #オピニオン
2024/5/21 2:00
 
台湾の新たな総統に就任した民主進歩党の頼清徳氏(中央)
台湾の新たな総統に民主進歩党民進党)の頼清徳氏が就任した。就任演説では、中国との関係について「へつらわず、高ぶらず、現状維持に取り組む」と述べた。統一も独立も唱えない蔡英文前政権の路線継承は重要である。習近平国家主席が主導する中国を刺激しない慎重さを評価したい。

頼氏は過去の言動から台湾独立を主張する政治家と目されていた。最近は蔡政権の副総統として、その主張を封印していた。頼新政権の外交・安全保障政策を担う要職にも蔡政権の中核人物が起用され、継承が重視されている。

頼氏は「1996年のきょう、台湾で初めて民選による総統が宣誓して就任し、国際社会に中華民国台湾は主権独立国家であり、主権は民にあるというメッセージを伝えた」とも訴えた。台湾の人々が歴史的に勝ち取った民主主義と自由は譲ることができないという主張には、大きな意味がある。

頼氏は中国との対話、交流に意欲を示した。対等な形での相互の観光往来、台湾への留学再開などに言及している。その前提は、台湾の人々による政権選択の尊重である。

中国側は、独立色が強いという理由から民進党を相手にしてこなかった。一方で「一つの中国」を巡って一定の共通認識がある野党・国民党との交流を重視してきた経緯がある。

中国は「台湾への武力行使の放棄は決してしない」とも明言している。だが、軍事的な圧力、言葉による威嚇は台湾との距離を広げるだけだ。

中台双方は今後、対話と交流に向けて具体的な方策を探ってほしい。中台間で対話が動き出せば、緊張緩和によってビジネス上の交流も促進される。それは地域経済にも好影響を及ぼす。

台湾海峡の平和と安定は、日本とアジア太平洋、そして世界の安全保障にとって極めて重要だ。台湾の半導体産業は世界のサプライチェーンの中核に位置し、最近は日本への投資も増加している。日本は同盟国の米国と連携しながら、台湾海峡の安定維持に様々な形で貢献すべきである。

96年に台湾総統の直接選挙が実施されて以来、民進党が3期連続で政権与党になるのは初めてだ。与野党による真摯な政策論争と公正な選挙を通じて、今後も台湾の民主主義に一段と磨きをかけてほしい。