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2023/12/13 19:00
飲食などの業種では人手不足を理由に先行きに不安感も(東京・新橋の飲食店街)
企業の景況改善の裾野が広がっている。日銀が13日発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)で、大企業に遅れて中小企業でも景気判断が上向いてきた。内需の好循環の実現に向け、この流れを持続させる努力が欠かせない。
企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は「良い」と答えた企業の割合から「悪い」とした割合を差し引いた値。大企業は製造業、非製造業ともに前回の9月調査からそれぞれ3ポイント上昇し、市場予想を上回る改善を示した。
自動車の生産回復や資源高騰の一服、経済の正常化が後押しし、企業活動の面からは景気回復の流れが続いていることを裏づけた。
目を引いたのが中小企業の景況改善だ。製造業は6ポイント上昇のプラス1。4年9カ月ぶりに「良い」が「悪い」を上回った。非製造業はプラス14と2ポイント上向いた。大企業にやや遅れて新型コロナウイルス禍前のピークを超え、1991年以来の高水準を記録した。
製造業を中心に、大企業に比べて遅れが目立っていた価格転嫁にようやく進展がみられた。
販売価格の動向をみるDIでは、中小企業で先行きの価格上昇を見込む声が増えている。賃上げの裾野を広げる観点からも、今後の動きに注目したい。
先行きには不安もある。大企業、中小企業ともに3カ月後の景況感は悪化を見込む。中国など海外経済の不透明感を指摘する企業が多い。国内でも、長引く物価高で消費者心理が悪化することを懸念する向きが増えている。
宿泊・飲食業を中心に、人手不足を心配する声も目立つ。雇用の過不足を示すDIは中小を軸に人手不足の度合いが強まっている。中小の今年度の新卒採用計画は予定した人数を確保できそうにないため、下方修正となった。
人手不足が企業活動の足かせになるとしたら問題だ。企業は賃上げ継続による人材確保の試みに加え、業務運営の効率化、計画的な省力化投資の実行をテコに成長継続への道筋をつけてほしい。