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[社説]完璧な月着陸の成功目指し技術を磨け

[社説]完璧な月着陸の成功目指し技術を磨け
 
 
#社説 #オピニオン
2024/1/20 19:05
 
探査機「SLIM(スリム)」の月面着陸について記者会見するJAXAの(手前から)山川宏理事長、国中均・宇宙科学研究所長ら(20日未明)
宇宙航空研究開発機構JAXA)の小型探査機「SLIM(スリム)」が月面に着陸した。旧ソ連、米国、中国、インドに続く世界5カ国目となる。

太陽光パネルが発電せず、月の起源を探る調査は数時間で終わったようだ。JAXAの国中均・宇宙科学研究所長は「ギリギリ合格の60点」と厳しく評価した。

とはいえ、米中に比べ限られた予算の中で、世界的にも難易度の高いミッションを成し遂げた。開発陣の努力をたたえたい。原因究明を徹底し、次は完璧な着陸ができるよう技術を磨いてほしい。

スリムは2つの独自技術を採用した。ひとつはカメラで月面を撮影、月の地図と照合しながら位置を修正し、狙った場所に半径100メートルの誤差で着陸する技術だ。従来は数キロメートル以上あった。最終的な成否の判断は1カ月後だが、着陸時の軌道からすると、成功した可能性が高いという。月探査の歴史の中でも大きな成果といえる。

もうひとつは斜面に着陸するための技術だ。従来のように平らで容易な場所に降るのではなく、着地した直後に柔道の受け身のようにわざと倒れ込み、転倒のリスクを減らすことを狙った。月面にはクレーターがあり、地形が複雑な場所も多い。水や金属資源の有望地点や科学的に重要な岩石の付近などを調べるのに、不可欠な技術とされている。

こちらには、何らかの問題が発生した可能性がある。太陽光パネルに日が当たらず、発電できていない。倒れ込んだ際に坂が急だったため、想定よりも大きく転がったと指摘する専門家もいる。

着陸途中に切り離した2機の小型探査車は順調に稼働し、スリムの観測機器も短時間とはいえ機能している。宇宙科学研究所小惑星探査機「はやぶさ」など困難に立ち向かい、成果を挙げてきた。今後も挑戦を続けてほしい。

アポロ計画の終了から半世紀を経て、月をめぐる競争が再び激しくなっている。月の資源の開発や活用に注目が集まり、難しい場所に狙って着陸するというスリムの技術には、海外も関心を示す。

日本は月面や月を周回する基地の建設、有人活動で米国と連携する。インドとは水資源の獲得などを目指し、月の極域を探査する計画がある。国際協力を進めるうえで優れた独自技術は大きな武器となる。さらに高め、国際協力で主導的な役割を果たしたい。