バンブーズブログ

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核なき世界を目指す努力を積み重ねていく必要

[社説]ノーベル平和賞に結実した被爆者の訴え
 
 
#社説 #オピニオン #ノーベル賞
2024/10/12 2:00
 
原爆ドーム広島市)と平和祈念像長崎市)。ノーベル賞委員会は授賞理由を「核兵器が再び絶対に使われてはならないことを被爆者の証言を通じて示してきたこと」と説明し、すべての被爆者に敬意を表した
唯一の戦争被爆国から粘り強く発信し続けてきた核廃絶の訴えが、大きな実を結ぶこととなった。今年のノーベル平和賞に、日本原水爆被害者団体協議会日本被団協)が選ばれた。

ウクライナを侵略するロシアが核の脅しを繰り返し、中東でもイスラエルによるイランの核施設への攻撃が懸念されるなど、核兵器を巡る事態は緊迫の度を増している。そんなタイミングでの受賞である。これを好機ととらえねばならない。日本政府は改めて核廃絶への行動を急ぐべきである。

1945年8月6日の広島と9日の長崎で起きた惨禍は、決して消すことのできない過ちとして人類史に刻まれた。

日本被団協は56年8月に結成された。実体験だけが持ちうる迫真性、メッセージ性を支えに、被爆者たちは二度と核兵器を使わないよう、世界に訴え続けてきた。

ノルウェーノーベル賞委員会は授賞理由を「核兵器が再び絶対に使われてはならないことを被爆者の証言を通じて示してきたこと」などと説明し、全ての被爆者に敬意を表したいとした。

まさに長年にわたる被爆者の思いを正面から受け止めたものといえる。日本被団協は「引き続き核廃絶を訴えていきたい」とした。心から喜びたい。

もっとも先行きは楽観できない。来年は被爆から80年を迎える。授賞にあたって評価された「被爆者の証言」を直接聞くことができる時間は、もうわずかしか残されていない。被爆体験を次世代に継承する取り組みを、これまで以上に進めていかねばならない。

ロシアのプーチン大統領核兵器を使う条件を緩和するという。中国や北朝鮮を含め世界の核軍備支出は増加傾向にある。核兵器の使用は絶対に許されないという意識が低下してきていることを危惧せざるをえない情勢だ。

軍縮の動きが停滞する中、問われるのが日本政府の行動だ。今回の受賞をてこに、より積極的な役割を果たすべきだ。全ての核開発や使用を禁じる核兵器禁止条約へのオブザーバー参加をはじめ、あらゆる方策を探る必要がある。

日本被団協は「ふたたび被爆者をつくるな」を合言葉に運動を続けてきた。これからもその誓いは変わらない。唯一の戦争被爆国として、我々は一丸となって核なき世界を目指す努力を積み重ねていく必要がある。