[社説]東証の時間延長を市場活性化の契機に
#社説 #オピニオン
2024/11/5 2:00
東京証券取引所は5日から株式の取引終了時刻を30分延ばし、午後3時30分とする(東証、東京都中央区)
東京証券取引所は5日から株式取引の終了時刻を30分延ばし午後3時30分にする。短い時間の延長でも意義は大きい。上場企業に関する情報が効果的に伝わり、取引が活性化する契機にすべきだ。
東証が取引終了時刻を延ばすのは70年ぶりだ。関係者は東証のほか証券会社など多岐にわたり、円滑な移行に万全を期してほしい。
延長論議が高まった引き金は2020年10月に起きた東証のシステム障害だ。取引が終日停止してしまった。もっと取引時間が長ければ、その日のうちに復旧できる可能性が高まるとの判断だ。
ただ売買を増やす意味では30分の延長では力不足だろう。これを機に市場の効率性を高め、取引を呼び込む工夫をすべきだ。
上場企業には迅速な情報開示を望みたい。日本では大多数の企業が、決算など投資判断に関わる情報を取引終了後に発表している。取引時間が今回延びた分遅らせるのではなく、逆に早く発表する企業を広げたい。
取引終了後の方がじっくり読み込んでもらえるとの期待が企業側にあるようだ。だが私設取引所や海外市場は時間外でも取引できる。売買の薄い市場で先に値が動くより、自国市場が開いている時間帯のほうが多様な参加者の見方が株価に反映され、より適切な値付けができると考えるべきだ。
すでにトヨタ自動車などは取引時間中に決算を発表している。富士フイルムホールディングスなども発表を早めるという。
重要情報の多くは取締役会などの決議を伴うものだ。決まればいち早く適時開示すべきでインサイダー取引の防止にもなる。米国では朝の取引開始より前に発表する企業も多い。朝早い時間帯や昼休みで取引が止まる午前11時30分〜午後0時30分を使う手もある。
30分延びて1日5.5時間の取引になるとはいえ世界でみればなお短い。ニューヨークは6.5時間、シンガポールは7時間、ロンドンは8.5時間だ。さらにニューヨーク証券取引所が1日22時間取引にする計画を発表した。世界の投資家から取引を呼び込む市場間競争は一段と激しくなる。
延長時間をもっと長くする案もあったが、関連業界の事務負担が壁になったという。しかし最も大事なのは投資家の利便性だ。必要なら既存の仕組みを大胆に変える発想も持つべきだ。市場の魅力を高める努力に終わりはない。