[社説]女子の理数学力生かす授業に
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2024/12/15 19:00
東京大は女子中高生に工学の魅力を伝えるイベントを開いた(2023年9月、東京・豊島)
小中学校の算数・数学や理科で学力の男女差が広がっているのではないか。気がかりな兆候が国際調査で明らかになった。進み始めた女性理工系人材の増加にブレーキがかかりかねない。原因の解明と対策を急ぐ必要がある。
小学4年生と中学2年生を対象に昨年行われた国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の結果が出た。平均得点で見た日本の順位は小4が算数5位、理科6位、中2が数学4位、理科3位と世界トップレベルの水準を保った。
新型コロナ禍もあった中で学力の大きな低下が見られなかったのは評価できる。問題は男女差だ。小中、理数のいずれも女子が男子の得点を下回り、中2は前回2019年の調査より差が開いた。
意識の差も大きい。将来「数学を使う職業につきたい」と思う中学生の割合は男子30%に対し女子は14%。生まれつきの能力にこれほどの性差はないはずで、日本は学力でも興味・関心でも女子の潜在力を引き出せていない。
事態を重く見た文部科学省は男女差に着目した調査を充実させ、指導法の改善を図るという。やや後手に回った感もある。実態や原因の把握を進め、女子の理数学力を生かす授業を広めてほしい。
重要なのは「算数・数学や理科は男子の方が向いている」といった無意識の思い込みを大人が取り払うことだ。教員であれば理科の授業で女子より男子を指名しがちだったり、実験の際に男子が器具を扱い女子は記録係という分担が定着したりしていないか。
中学校段階で物理に苦手意識をもつ女子が増えるとの研究結果もある。「つまずいている子ども全員を支える」という従来の考え方だけでは状況の改善は難しい。男女差の解消を意識した授業設計、学習支援を始めるべきだ。
最近は大学の工学部も製造業の仕事も様変わりし、知の創造や製品・サービスの革新に男女双方の発想が必要になっている。そうした変化を子どもに届け、理系への進路選択を応援していきたい。