[社説]日本の半導体は復活できるか正念場だ
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2024/12/22 19:05
ラピダスの新工場(北海道千歳市)に搬入されるオランダASML製のEUV露光装置の一部が到着した(14日、新千歳空港)
日本の半導体産業が復活に向けて正念場を迎えている。東芝から分かれ出たキオクシアホールディングスは18日株式上場を果たしたが、メモリー市況の停滞を受け、初値は公開価格を下回った。
官民の支援や出資で発足したラピダスもパイロット生産の開始が2025年春に迫った。最先端の微細回路で描くロジック半導体の円滑な量産につなげられるか、いよいよ真価が問われる。
デジタル時代の「頭脳」である半導体の重要性は増すばかりだ。市場の成長性も大きく、石破茂首相は臨時国会で「30年度までに人工知能・半導体分野に10兆円以上の公的支援を行う」と述べた。
ただ、資金がいくら潤沢でも事業が成功する保証はない。一度は没落した日本の半導体が復活するには過去の教訓を踏まえて、新たな発想で取り組む必要がある。
その1つが行きすぎた自前主義の是正だ。自前の技術や人材に固執し、外との協業に背を向けるようでは復活は難しい。この点でラピダスは米IBMから次世代技術を導入し、オランダの装置メーカーのASMLホールディングとも協力関係を築いた。キオクシアは次世代メモリーを台湾や韓国の企業と共同開発する。外部と連携して価値創造するオープンイノベーションの巧拙がカギを握る。
2つ目は日本企業にありがちな技術偏重から脱し、マーケティング(用途開発)重視にカジを切ることだ。かつて米インテルは米マイクロソフトとともにパソコン市場をつくった。米エヌビディアの半導体は人工知能(AI)の進化に欠かせない存在になった。
先端ロジックの多品種少量生産をめざすラピダスは自動運転や遠隔医療、ロボティクスなどの成長分野で自社の半導体を組み込んだ新市場を創出できるかが成否を分ける。そのためにはトヨタ自動車をはじめ内外の顧客企業とのパートナーシップが重要になる。
3点目は台湾積体電路製造(TSMC)や韓国サムスン電子などの巨人と正面からぶつかるのを避ける戦略性だ。半導体市場の急速な成長を考えれば、大手との住み分けは十分に可能だろう。
半導体への巨額の公的助成については賛否がある。政府の関与が呼び水となり、民間からの投資が合流し、半導体についての技術や人材、生産の基盤が強化される展開にしないといけない。25年はその一歩を踏み出す年になる。
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