バンブーズブログ

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[社説]理解得られぬロシアの核配備


 
 
#ウクライナ侵攻 #社説
2023/3/27 19:00
プーチン大統領は核搭載可能なミサイル「イスカンデル」をすでにベラルーシに搬入済みという(2022年2月、ロシア南部で発射演習する「イスカンデル」、タス=共同)
新たな脅しのつもりだろうが、追い詰められた自らの立場をさらすようなものだ。

ロシアのプーチン大統領ベラルーシに戦術核兵器を配備することで同国と合意したと発表した。ソ連崩壊以降、ロシアが国外に配備するのは初めてとなる。

プーチン氏は米国が北大西洋条約機構NATO)の同盟国に戦術核を配備してきたことに言及。同様の措置だと正当化した。

ウクライナ侵攻で苦戦していることが背景にあるのは明らかだ。これまでも核兵器の使用をちらつかせてきたが、ウクライナや同国を支援する米欧諸国に動じる気配がないため、同盟国のベラルーシを利用したのだろう。

国際社会の理解も得られまい。3月21日の中ロ首脳会談後に署名した共同声明は「核戦争に勝者はいない。戦ってはならない」と強調。「すべての核保有国は自国外に核兵器を配備することを控え、配備されたものは撤収すべきだ」と明記した。

その直後にこのような矛盾した行動をとるのはプーチン氏の無責任さと苦境ぶりをあらわしている。頼りとする中国との関係にも影響を与える可能性がある。

そもそもロシアは核拡散防止条約(NPT)で核保有を認められた国の一つで、核軍縮交渉を誠実に行う義務を負っている。

にもかかわらず、ロシアは米国と結ぶ新戦略兵器削減条約(新START)の履行を停止するなど脅威をあおる一方だ。もはや核大国を名乗る資格はない。

米政府高官によると、いまのところロシアが核兵器を移動させた兆候はない。しかし、実施すれば管理体制も含めて不測の事態が起きる可能性が高まる。

ベラルーシ憲法で「自国領を非核地帯とし、中立国を目指す」としていた。2022年2月の憲法改正でその条文は削除したが、国民には侵攻に巻き込まれることへの不安は大きい。いまからでも遅くない。同国のルカシェンコ大統領は配備を拒否すべきだ。