バンブーズブログ

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[社説]台湾総統の訪米で中国は対抗措置控えよ


 
 
#社説
2023/4/6 19:05
米国のマッカーシー下院議長は台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統に超党派による支援を約束した=ロイター
台湾の蔡英文総統が米西部カリフォルニア州で米連邦議会マッカーシー下院議長と会談した。共和党マッカーシー氏は、民主党も含む超党派で台湾を支援する方針を伝えた。中国は反発しているが、緊張を高めるような対抗措置は自制すべきだ。

会談は蔡氏が中米訪問の帰路で米国に立ち寄った際に実現した。下院議長は大統領の継承順位が副大統領に次ぐ2位だ。中国が台湾への威嚇を強める情勢下で、米台の枢要な立場にある人物が連携を確認する意義は大きい。

マッカーシー氏は下院議長としての訪台に意欲を示してきた。蔡氏を米国に迎える形の会談となったのは、台湾側の要望とされる。2022年8月に当時のペロシ下院議長(民主党)が訪台し蔡氏と会った際、中国は大規模な軍事演習で台湾を威嚇した。日本の排他的経済水域EEZ)には弾道ミサイルを撃ち込み、台湾海峡周辺に緊張が走った。

マッカーシー氏は5日の記者会見で将来の訪台の可能性を排除しなかった。中国の圧力に屈する形で訪台を見送るべきではないが、今回のように台湾の要請であればやむを得ない対応といえる。

中国外務省は報道官談話で「断固たる措置をとる」と今回の会談を非難した。台湾国防省によると、中国海軍の空母「山東」が台湾東側の海域で訓練を初実施した。だが中国は米中関係をさらに悪化させ、衝突リスクを高める行為に踏み切るべきでない。

中国は台湾の野党、国民党の馬英九前総統を招待した。馬氏は蔡氏の中米訪問、米国立ち寄りとほぼ同じ日程で中国内を回っている。台湾総統の経験者の訪中は初めてで、中国側は歴史的な旅だとして馬氏を歓待している。

中国が昨夏のように台湾に厳しい対抗措置を打ち出せば、来年の台湾総統選を戦う国民党にとってもマイナスだ。3期目入りした習近平政権の最大の問題は、落ち込みが著しい経済の立て直しである。米国や台湾とのこれ以上の関係悪化は経済にも打撃になる。

不測の衝突を避けるため、米中対話の重要性はかつてなく高まっている。ブリンケン国務長官の訪中は早期の実現が望ましい。2月に予定された訪中が延期されたのは、中国が米本土に飛ばした「偵察気球」が原因だ。対話の環境を整えるためにも中国はこの問題について真摯に説明すべきだ。