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2023/4/15 7:35
モンタナ州議会はTikTokの同州での運営を禁じる法案を可決した=ロイター
【シリコンバレー=山田遼太郎】中国発の動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」の米国での利用を巡り、州単位で規制する動きが出始めた。西部モンタナ州議会は14日、運営会社の同州での事業を全面的に禁じる法案を可決した。同様の動きが他の州にも広がる可能性がある。
州下院が同日、州内でティックトックの事業運営やアプリをダウンロードできる状態にすることを禁じる法案を可決した。住民に罰則はない一方、運営会社やアプリストアの事業者には1件の違反につき1万ドル(約130万円)の罰金を科す。
今後、ジアンフォルテ州知事(共和党)の署名を経て法案が成立すれば、2024年1月から施行される見通しだ。同州議会は共和党が多数派を占める。
政府機関のIT(情報技術)端末などでの使用を制限する動きはあるが、全面的な禁止に踏み切るのは同州が全米で初めてになる。法案は「利用者のデータを盗み、それを中国共産党と共有するティックトックの能力はプライバシーを侵害している」などと非難した。
ティックトックの運営会社は日本経済新聞に対し「政府の越権行為で権利が脅かされるモンタナ州の利用者やコンテンツ制作者のために引き続き闘う」とコメントした。
州内での利用が禁じられても、VPN(仮想私設網)などの手段を使うことでアプリのダウンロードができるとの指摘がある。どのように実効性を持たせるのかは不透明な部分が多い。法案をめぐって訴訟になれば最高裁までもつれ込むとの見方も出ている。
規制が広がるのは米国内の利用者のデータが中国政府に渡るなどの安全保障上の懸念からだ。ティックトック側は3月の連邦議会の公聴会でも、運営会社の周受資最高経営責任者(CEO)が「いかなる影響もない」と中国政府の関与を強く否定した。だが中国では国家が企業に情報収集への協力を求めることができるとされ、懸念を払拭できていない。
利用制限の動きは他州にも広がる。西部ユタ州では3月、ティックトックを含むSNS(交流サイト)の利用について、18歳未満には保護者の同意を義務づける法案が成立した。ロイター通信によると25以上の州が、政府機関のIT端末でティックトックの使用を禁じている。
バイデン政権は3月、外国企業が所有するアプリなどが「米国の利用者に国家安全保障上の脅威を与える」と判断した場合に禁止する法案に賛意を示した。親会社である中国の字節跳動(バイトダンス)にはティックトックの株式売却を指示した。連邦レベルでも規制の動きが加速する可能性がある。
個人の表現の自由との兼ね合いから、全面的な禁止にはなお慎重論も根強い。米国には若年層を中心に1億5000万人を超えるティックトックの利用者がいる。米調査会社データ・アイによると逆風が強まるなかで4月現在で米国のアプリダウンロード数で上位10位以内を保つ。