バンブーズブログ

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[社説]エネ・環境目標は多様な手段で実現を


 
 
#社説
2023/4/17 19:05
G7気候・エネルギー・環境相会合を終え、記者会見する西村経産相(右から2人目)。左隣は西村環境相(16日午後、札幌市)=共同
主要7カ国(G7)の気候・エネルギー・環境相会合が札幌市で開かれた。共同声明は2050年に温暖化ガスの排出実質ゼロの目標を再確認し、排出削減対策を講じていない化石燃料の段階的廃止を盛り込んだ。

エネルギー危機と増加する異常気象への対応が緊急度を高め、安定供給と気候変動対策の両立の重みは増している。日本はG7と歩調を合わせて取り組みを深掘りし、合意を新興国・途上国にエネルギー転換を促す土台としていかなければならない。

3月に公表された国連の気候変動に関する政府間パネルIPCC)の第6次統合報告書に基づき、共同声明は35年までに温暖化ガスの排出を19年比で60%削減し、遅くとも25年までに減少へ転じさせることを求めた。

そのために再生可能エネルギーの導入拡大や、天然ガスを含む化石燃料の段階的廃止、自動車の二酸化炭素(CO2)排出を35年までに00年比半減することなどを盛り込んだ。脱炭素技術に不可欠な重要鉱物の供給網構築で連携することも確認した。

議長を務めた西村康稔経済産業相は記者会見で、「各国の事情に応じた多様な道筋でゴールを目指す」と語った。各国の国土や経済条件の違いを考慮し、それぞれのやり方で目標に近づけることを確認した点は重要だ。

水素やアンモニアといった脱炭素燃料やCO2の回収・処理技術の役割を明記した。火力発電の依存率が高い日本は化石燃料の段階的廃止に応じつつ、これらの技術を脱炭素の手段として裏付けを得ることで実を取ったと言える。

ただし、いずれも開発途上の技術だ。火力発電の温存につながるとの批判もある。日本はこれらを使って排出ゼロに至る道筋を丁寧に説明する必要がある。

原子力発電についても「使用を選択した国々」にとっては、気候変動に対処し、エネルギー安全保障を確保すると評価した。

G7は新たにした決意を新興国・途上国にどう訴えかけていくかが大切だ。グローバルサウスと呼ばれるこうした国々は今や、エネルギー消費でも、温暖化ガスの排出量でもG7を大きく上回る。

G7の目標が新興国・途上国への押しつけとなっては理解を得られまい。地域の事情に応じた多様な手段でエネルギー転換を後押ししていくことが欠かせない。