バンブーズブログ

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[社説]合成燃料を脱炭素の選択肢として備えを


 
 
#社説
2023/3/30 2:00
ポルシェとシーメンスエナジーが立ち上げた合成燃料の製造工場。陸上風力発電でつくる電気で水素を生成する(チリ南部)
欧州連合EU)が温暖化ガスを出さない合成燃料を使う場合に限り、2035年以降もガソリン車など内燃機関車の販売継続を認めることで合意した。

電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)とともに、自動車の脱炭素を実現する手段に位置付ける。航空機や船舶、都市ガスにとっても選択肢となりうる。日本も合成燃料の技術開発やコスト低減、法制度の整備に取り組み、活用に備えなければならない。

EUは50年の温暖化ガスの排出ゼロを掲げる。対策の一環で内燃機関車の新車販売を35年までに禁止する準備を進めていたが、自動車など産業界の反発を受けたドイツが見直しを求めていた。修正は削減目標を堅持しつつ現実解を見いだす苦肉の策といえる。

合成燃料とは工場や発電所から出る二酸化炭素(CO2)と、太陽光や風力など再生可能エネルギーを使ってつくる水素を合成してできる人工的な燃料だ。

ガソリンや軽油、ジェット燃料、都市ガスの主原料であるメタンなどとほぼ同じ組成の燃料ができる。これを燃焼させて出るCO2は、製造時に吸収したCO2と相殺することで実質的な排出はゼロとされる。

ガソリンスタンド網や、航空機や船舶のエンジン、都市ガスのパイプラインなど既存のインフラがそのまま使える一方、現状のガソリン価格と比べて何倍も高いコストが課題だ。温暖化ガスの削減成果が誰に帰属するかのルールも定まっていない。

先行するEVに比べ自動車での利用は限定的だとの見方は強い。それでも気候変動対策をリードするEUが合成燃料を脱炭素の選択肢と明確にしたことは重要だ。

航空機の脱炭素は電動化やバイオ燃料など、船舶ではアンモニアとの混焼など様々なアイデアが生まれているが、決め手を欠く。EUによる政策的な裏付けが、合成燃料の技術開発やコスト低減の競争を促す可能性を注視すべきだ。

日本政府のGX(グリーントランスフォーメーション)基本方針は、自動車や航空、都市ガスなど合成燃料分野に今後10年で3兆円を投じる絵を描く。

実用化には原料となる水素を安価で大量に調達することが条件となる。調達網の構築へ国際連携が欠かせない。利用に向けた国際的なルールづくりにも積極的に関与していかなければならない。