バンブーズブログ

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[社説]米銀が抱えるリスクへの警戒を怠るな


 
#社説
2023/4/22 19:05
JPモルガン・チェースのダイモンCEOは増益決算ながら、先行きへの警戒を隠さなかった
米主要金融機関が2023年1〜3月期決算を発表した。米地銀シリコンバレーバンク(SVB)が破綻し業績悪化の広がりが懸念されたが、大手は比較的堅調な内容だった。しかし急速な利上げの影響や融資の焦げつきといった懸念は消えない。米銀が抱えるリスクへの警戒を解くべきではない。

JPモルガン・チェースなど商業銀行業務が主体の大手4行はそろって前年同期を上回る増益だった。金利上昇がなお追い風で、預金と貸出金との金利差が広がるかたちで純金利収入が増えた。

懸念された預金の流出は大手では目立っていない。SVBの場合、急激な預金流出に直面したが、JPモルガンは預金を増やした。大手にまで不信の目が及ぶことが警戒されただけに、ひとまず安心感につながったのは確かだろう。

しかし預金が2割近く減ったザイオンズ・バンコーポレーションのような地銀もある。脆弱行が預金を失って貸し出しを無理に減らすといった事態が広がらないとも限らず、予断は許されない。

実際、米連邦準備理事会(FRB)の地区連銀経済報告では、銀行が融資を絞る動きが相次いで指摘された。大手行の3月末の融資残高をみても2年ぶりに前の四半期を下回った。融資に慎重になり始めており、注意が必要だ。

急ピッチな利上げの影響で、景況感の悪化が危惧される。例えば商業用不動産向け融資が細り、価値の下落が深まることで不良債権が増える事態に陥らないか、目をこらしておかねばならない。

満期までが長い運用資産が金利上昇で含み損になり始めたのも銀行が抱える財務リスクだ。純金利収支も調達コストの方が今後上がってくる。JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者は「嵐を呼ぶ雲は地平線上にとどまっている。銀行界の混乱がリスクを強める」と懸念を隠さない。

SVBの破綻を踏まえ、FRBは銀行規制の強化策を近く打ち出す。破綻を繰り返さないために必要な施策だ。一方で融資の厳格化に伴う副作用にも目を配らねばならない。投資ファンドなど銀行システムの外側でマネーが膨張している。それが逆回転した場合、思わぬ損失が出る怖さがある。

過去の金融危機は、当初特殊だとみた事例から金融システムに及ぶ問題に発展するパターンを繰り返した。米金融当局は広く警戒を怠らず事態に対応してほしい