バンブーズブログ

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[社説]外国人が安心して働ける環境整備を急げ


 
 
#社説 #オピニオン
2023/6/18 19:05
政府は外国人労働者の永住に道を開く在留資格の対象拡大を決定した(9日)=共同
政府が外国人の在留資格「特定技能」について、長期就労や家族の帯同ができる業種を大幅に広げることを決めた。熟練労働者に永住への道を開く転換点となる。外国人に活躍してもらうためには安定した生活基盤が欠かせない。政府は山積する課題に向き合い環境整備を急ぐべきだ。

特定技能の資格には在留が最長5年の「1号」と、何度も更新できる「2号」がある。2号の対象に外食や宿泊など9つの業種を加え、計11分野に増やす。秋ごろから2号を取得するための技能試験を始める方針だ。

人口減が進むなかで社会経済基盤を維持するには外国人労働者が欠かせない。家族と暮らせることは働き手にもメリットが大きく、特定2号の対象拡大は妥当だ。

求められるのは外国人が安心して働き、生活できる環境づくりだ。これまで不況になると労働契約を更新しない「雇い止め」によるトラブルが多発したが、それでは信頼は得られまい。

受け入れ側は将来の中核人材を育てる意識を持ってほしい。厚生労働省によると特定技能の資格者の賃金は平均で月20万6000円にとどまる。日本人と同等に能力開発の機会を提供し、技能に見合った賃上げが不可欠だ。

配偶者や子供への支援も極めて重要になる。多言語対応の相談窓口や、日本語を学びやすい環境の整備が急務だ。不就学の児童への対応や医療通訳者の養成も要る。外国人家族が孤立せず地域社会に溶け込めるよう自治体やNPO、住民の連携が欠かせない。

浜松市のように家庭を訪問してきめ細かく相談に応じる例もあるが、支援の度合いは地域によってバラツキがある。政府が自治体任せにしてきた結果といえる。

韓国政府は外国人労働者の韓国語教育から企業とのマッチング、帰国までのすべてのプロセスを管理する。日本も政府が前面に立って、支援体制の水準を全国的に引き上げていく必要がある。

円安傾向もあって日本で働く魅力は低下している。アジアでの外国人労働者の獲得競争は激しく、政府は危機感を持つべきだ。

賃金不払いや失踪などのトラブルが絶えない技能実習制度について、政府は発展的に解消して新制度を創るという。看板の掛け替えに終わらないか心配だ。技能実習は廃止して特定技能に一本化し、広く人材を受け入れるべきだ。