バンブーズブログ

社会の大きな流れは新聞のトップニュースに掲載されます。 その情報を読み続けていくと数年先が見えてきます。それは怖いものなしです。

社説]人口減を前提に社会を作り直そう


 
 
#社説
2023/4/27 2:00
日本は急激な人手不足を乗り越えなければならない
日本の人口減少は着実に進み、社会のあちこちに深刻な影響を与える。労働力が急速に減る中で社会機能をどう維持し、増え続ける高齢者を支えていくのか。厳しい未来図を直視して社会全体の変革を急がなければならない。

国立社会保障・人口問題研究所が26日公表した将来推計人口によると、外国人を含む日本の総人口は2070年に8700万人になる。20年の1億2615万人から50年間で約3割減ることになる。

外国人の見積もり多く

将来推計人口は5年ごとの国勢調査をもとに50年後までの人口を推計する。人口は出生率や平均寿命、外国人を含む出入国の状況によって変動していくが、近年の動向を未来に投影する形で仮定を置き、将来像をはじいた。

20年の国勢調査を出発点とする今回の推計では、人口減少のペースが前回推計に比べて緩む結果となった。総人口が1億人を割り込む時期は、前回の53年から56年に3年遅くなった。

これは出生率が上がるためではない。大きな要因は日本で暮らす外国人の人口を大きく見積もったことだ。前回調査では外国人の入国超過数を年6.9万人とみていたが、今回は年16.4万人と2倍以上になった。この結果、70年時点の外国人数は939万人と20年時点の3.4倍に増え、総人口の1割を超える推計になっている。

もう一つの要因は平均寿命が延びることだ。20年時点の平均寿命は男性81.58歳、女性87.72歳だったが、70年には男性85.89歳、女性91.94歳になる。さらに日本人の出国超過がわずかに減少したという要因も加わり、将来の推計人口が上振れした。

今回の推計をもって人口減少のトレンドが改善したと受け止めるのは楽観的すぎるだろう。確かに在留外国人数は22年6月時点で296万人と、15年末時点の223万人から約3割も増えたが、この流れが中長期的に続く保証はまったくないからだ。

中国や韓国など人口減や少子化に直面する国が増え、今後は人材獲得競争が一段と激しくなる。日本人と同等に処遇して海外に見劣りしない水準に賃金を引き上げないと日本は選ばれなくなる。

足元で必要なのは人口への楽観を排し、急激に進む人手不足への対応に全力を注ぐことだろう。15〜64歳の生産年齢人口は20年に7509万人だったが、45年には2割減の5832万人になる。外国人数が横ばいなら減少率は3割に近づく。テクノロジーで省人化を徹底するなど知恵を結集し、社会の機能を維持できる方策を見いださなければならない。

日本はさまざまな重要な決断を迫られる大きな変革期にある。外国人を今後どのくらい受け入れるのか、日本社会のなかでどう位置づけるのか。もっと正面から議論しなければならない。

人口が急減した地域では道路や鉄道、水道、電線といったインフラの維持が難しくなる。森林の保全も行き届かなくなるだろう。国土が荒廃する懸念もある中で、国民の居住地をどう考えるか。地方自治のあり方を含め、持続可能な対策を打ち出す時期だ。

労働力の縮小と並行して高齢化は一段と進み、43年には65歳以上の高齢者数がピークの3953万人に到達する。現役世代への過度な負担を避けながら急増する高齢者にしっかり寄り添うために、効率的な医療や介護の仕組みを追求しなければならない。

年金は慎重に検証を

政府は年金制度への影響を慎重に検証してほしい。今回の人口推計では合計特殊出生率の長期想定が1.36と前回推計の1.44から低下し平均寿命も延びた。これらは年金財政を悪化させる要因になる。厚生労働省は増えていく外国人が年金を支えるプラス要因もあるとして「年金制度への影響は限定的」との立場だが、外国人がどうなるかは不確定要素が多い。

今回の推計が突き付けるのは今を生きる多くの成人にとって、人口減少がほぼ確定した未来だということだ。出生率が長期的に2.20まで上がる最高位のシナリオでも、人口が反転増加するのは70年よりも後になる。こうした現実に向き合い、縮小する社会で生活や文化、経済活力を守る手立てを早急に考える必要がある。

少子化対策の重要性は変わらない。出生数が増えれば人口減のペースは鈍り、活力ある社会を将来の世代に継承しやすくなる。社会変革の時間を稼ぐことにもつながる。固定化した男女の役割分担や硬直的な雇用慣行など、根本原因にメスを入れる対策が急務だ。