バンブーズブログ

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社説]技能実習制度の看板掛け替えでは困る


 
 
#社説
2023/4/11 19:05
政府の有識者会議は技能実習制度の廃止と新制度の創設を求める案を提示した(10日)
外国人労働者の受け入れのあり方を検討する政府の有識者会議が、技能実習制度の廃止を求める提言の試案を示した。

技能実習制度は国際貢献をうたいながら、実際には人手不足を補う手段になってきた。違法な長時間労働や賃金不払い、実習生の失踪などトラブルが絶えず、人権侵害の問題があると海外からも批判されている。私たちは制度廃止を繰り返し主張してきた。有識者会議の判断は当然であり、むしろ議論が遅すぎたぐらいだ。

有識者会議は技能実習制度に代わる新制度の創設も提案した。目的に「人材確保」を明記する一方で、「人材育成」という技能実習制度の要素も残す。

受け入れ窓口となる監理団体や監視機関の仕組みは維持しつつ、悪質な団体を排除し要件を厳格にするという。原則3年転職ができない制限については緩和するという表現にとどめた。技能実習制度の大枠が残り、看板の掛け替えにとどまらないか懸念がある。

政府は深刻な人手不足を解消するため2019年に産業分野を限定して新たな在留資格「特定技能」を創設した。今回の試案ではスキルが向上した外国人が特定技能に円滑に移行できるよう、対象職種を一致させる。

ならば新制度をわざわざ作らなくとも特定技能に一本化するのが筋ではないか。就業できる分野を増やし、就労状況の監視体制を強化するなど特定技能の制度拡充と改善を進める方が合理的だ。

日本が国際的な信用を取り戻すためには、技能実習制度の禍根を断ち、政策の転換を明確に示すことが欠かせない。

外国人労働者の受け入れには課題が山積する。悪質な仲介業者の排除は必須だ。日本人と同等の処遇や、日本語教育と生活支援の充実も急務となる。政府は単純労働は認めないとの原則にこだわり、就労実態に即した支援や保護を後回しにしてきた面がある。

有識者会議は今秋に最終報告をまとめる予定だ。技能実習の廃止を機に、外国人に国内で活躍してもらうための制度全体のあり方を再検討してもらいたい。

東南アジアで経済成長が進み、賃金が伸び悩む日本は働き先としての魅力が低下している。韓国は04年に外国人を労働力として正面から受け入れる政策へ転換した。日本政府は挽回への残り時間はあまりないと肝に銘じるべきだ。