#社説 #オピニオン
2023/6/22 2:00
通常国会最終日を迎え、散会する衆院本会議(21日)
通常国会が150日間の会期を終えて閉幕した。子育て支援や防衛力の強化をめざす予算と関連法などが成立したが、継続的な取り組みを支える安定財源の議論は先送りされた。これでは与野党が将来世代への責任をきちんと果たしているとは言いがたい。
岸田文雄首相は今国会で「防衛力の抜本的強化」「新しい資本主義」「こども・子育て政策」などを優先課題と位置づけた。
防衛費の大幅増額にカジを切る2023年度予算、防衛産業生産基盤強化法、GX(グリーントランスフォーメーション)推進法などの成立は一定の前進だと評価できる。各党は物価高対策、賃上げ、雇用問題といった課題について活発に論戦を交わした。
一方で少子化対策、エネルギーの安定確保、外交・安全保障といった国の将来を左右する長期戦略の議論は深まらなかった。
その責任はまず政府・与党の側にある。首相は「少子化は先送りできない待ったなしの課題」と繰り返し訴えたが、政府が「こども未来戦略方針」を決定したのは今月13日になってからだ。
児童手当の所得制限の撤廃や第3子からの増額など経済的支援に重点をおきつつ、年3兆円台半ばとする費用の財源は明示できていない。既存の社会保障の歳出削減に取り組む方向を打ち出したものの、どの程度の負担の抑制が見込めるのかは不透明だ。
防衛費増額に向けた財源確保法は16日に成立した。政府が同日決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)では、自民党の提言を踏まえて増税の開始時期を当初の「24年以降」から「25年以降のしかるべき時期」にずらすことも可能な表現に改めた。
重要な政策の方向がなかなか定まらないのは、国会審議や選挙の争点にしたくないとの意識がにじむ。野党は国民の負担増を厳しく批判しつつ説得力のある対案を示せておらず、政策論議が迫力を欠き低調な一因となっている。
今国会は党首討論が一度も開かれなかった。近年は開催頻度が極端に少なく、新たな運用方法を含めて見直すべきではないか。
国会終盤ではマイナンバーの誤登録や首相の親族の公邸での不適切な振る舞いなどをめぐる問題も表面化した。政治は国民の信頼が土台である。岸田政権はタガを締め直し、懸案解決に向けた取り組みを加速してほしい。