バンブーズブログ

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[社説]中国は外相解任理由の説明を


 
 
#社説 #オピニオン
2023/7/28 2:00
25日に中国外相を解任された秦剛氏(今年1月、エジプトで)=AP
中国政治の不透明さが一段と際立つ事件だ。中国の外相だった秦剛氏が理由不明のまま解任された。動静が1カ月間も不明だったが、中国から意味のある説明が全くない。世界に大きな影響力を持つなら、国際社会への説明責任も重い。中国はそれを自覚すべきだ。

共産党総書記(国家主席)の習近平氏が主導する体制下では、「反腐敗」を掲げた政治運動で、多くの高官らが失脚した。だが、過去に遡っても外交責任者が突然、解任されたのは異例だ。

今回の解任に際し、中国政府の責任者らは理由に関して何ら発信していない。共産党が全てを決める体制は、西側民主主義体制とは異なる。とはいえ、少なくとも自国民には現状を丁寧に報告する義務がある。中国と外交的な接触がある国々が、不透明な中国政治に疑問を抱くのも当然である。

後任の外相には、前任者で共産党政治局委員の王毅氏の復帰が決まった。中国外交を仕切る党組織の責任者の再登板で、外交政策に今すぐ支障が出るわけではない。

それでも、中国外交が直面する課題は多い。ロシアのウクライナ侵攻への対処もそのひとつだ。ロシアと緊密な関係にある中国は、当事者間の仲介に意欲を見せる。中国の役割は重要だ。しかし、担当部門責任者の突然の交代について説明すらできない国が、関係各国から信頼を得るのは難しい。

今、世界が注目するのは、悪化している米中関係の今後だ。秦剛氏は外相就任の直前に駐米大使を務めていた。両国関係はその頃も悪化の一途をたどっていた。

習氏とバイデン米大統領は、11月に米国で開くアジア太平洋経済協力会議APEC)首脳会議の際、2国間首脳会談をする方向で探り合いを始めている。中国の特異で政治的な動きが、この流れに影響しないのかも気になる。

日中関係の現状も非常に難しい局面にある。外相に復帰した王毅氏は、かつて駐日大使を務めた知日派だ。対日関係の改善に向けた新しい知恵を期待したい。