バンブーズブログ

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[社説]日中関係の安定にはまず邦人の解放を


 
 
#社説
2023/4/3 19:05
中国の李強首相(右)と面会する林外相(2日、北京の中南海)=代表撮影・共同
林芳正氏が3年ぶりとなる外相訪中で、新任の李強首相、外交トップの王毅氏、秦剛外相と会った。難しい局面の日中関係にとって重要な意味がある。

とはいえ今後の関係安定には、拘束理由さえ不明なアステラス製薬社員のいち早い解放が必要だ。それがないなら、社員の安全に責任がある外資企業は、安心して中国に人員を送れない。

日本人拘束事件に関しては、林氏が強く解放を要求したが、中国側の具体的な回答は公になっていない。今後も解決の見通しが立たなければ、経済を中心とした日中関係に多大な支障が出る。

問題は日本側の強い意思が、全権を握る習近平国家主席にまで正確に伝わっているかである。その観点では今回、中国共産党の序列2位で、習氏の最側近としても知られる李強氏に面会できたのは大きかった。

日本側としては、引き続きあらゆる手段を尽くして中国トップに決断を促す方法を探るべきだ。この問題が動けば、中国の「ゼロコロナ政策」解除もあり、再び日中間のビジネス、観光両面の人的往来が活発になる。日本の経済界も新たな対中ビジネス、投資に踏み切りやすくなる。

経済安全保障を巡っては、両国間に様々な課題がある。日本が発表した半導体関連の輸出規制に中国は反発している。秦外相は、中国向けの輸出規制を強めた米国に同調しないよう求めている。

安全保障問題には、大きな問題を抱える米中関係と技術覇権争いが絡む。日本には日米同盟を基軸とし、中国との間で長年、築いてきた経済関係にも目配りする難しいかじ取りが求められている。

沖縄県尖閣諸島東シナ海南シナ海、「台湾有事」などを巡る双方の主張には食い違いがある。そんな中、林氏訪中の前日だった3月31日には、日中防衛当局間のホットライン設置が完了した。危機管理は極めて重要で、歓迎すべき動きだ。偶発的な衝突を避けるためにも、一刻も早い正式な運用開始が待たれる。

日本は今年、主要7カ国(G7)の議長国を務め、5月には広島で開催するサミットを主催する。ロシアのウクライナ侵攻では、G7と立場が大きく異なる中国も和平に向けて役割を果たす意欲を示している。G7議長国の日本は、中国に責任ある行動をとるよう引き続き求めるべきだ。