バンブーズブログ

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[社説]官僚離れは人事院だけでは改善できない


 
 
#社説 #オピニオン
2023/8/8 2:00
 
人事院の川本総裁㊧から勧告を受け取る岸田首相。政治の取り組みが問われている(7日、首相官邸
若者の国家公務員離れが進んでいる。中央省庁は待遇や働き方の改善が遅れ、不規則な国会対応も敬遠される要因になっている。若者の官僚離れは、行政の質を低下させかねない国家的な課題だ。与野党は旧態依然とした国会運営を見直し、負担軽減の範を示してもらいたい。

人事院は7日、2023年度の国家公務員給与を大幅に引き上げるよう国会と内閣に勧告した。若手を中心に月例給やボーナスを引き上げ、初任給増額や在宅勤務手当新設も盛り込んだ。過去5年の平均に比べ約10倍のベースアップになるという。民間の大幅な賃上げを考えれば妥当な内容だ。

働き方改革の報告では、選択的週休3日制の導入や勤務間インターバルの確保など、多様な働き方を可能にする制度を打ち出した。民間に近い形で柔軟に働ける制度的な受け皿はだいぶ整ってきたと評価できる。

ただそれだけでは国家公務員が敬遠される現状に歯止めをかけるのは難しい。今春の総合職試験の申込者は1万4372人と過去2番目に少なく、合格倍率は過去最低の7.1倍だった。入省10年未満の退職者の増加も目立つ。

官僚離れには複合的な要因がある。政策決定で政治主導が進み、予算効率化で仕事の外部委託も増えた。幹部人事に首相官邸の関与が強まり、行きすぎた「忖度(そんたく)」も指摘される。国家運営を担う官僚としてのやりがいを損なっている面は否めない。

一方、霞が関働き方改革の障害になっているのが国会審議などへの対応業務である。

与野党は1999年に国会の質問内容を事前に伝える質問通告について、質疑の「2日前の正午まで」と申し合わせた。それでも質問通告は遅れがちで、官僚に深夜・未明の答弁作りや早朝の閣僚説明を強いてきた。

6月の衆院議院運営委員会の理事会でも、改めて質問通告の迅速化とデジタルツールの利用を確認した。実効性を高めるには議員名と通告時間、内容や連絡手段を公表するのも一案だろう。

緊急時ならまだしも、平時に公務員が昼夜を問わず働くのは当然だという意識が人材獲得を阻んでいるとすれば大きな問題だ。霞が関働き方改革は、人事院や各省の取り組みだけでは進まない。国会議員が甘えと前例踏襲を排して一歩を踏み出すべきだ。