#社説 #オピニオン #自民政治資金問題
2023/12/14 2:00
岸田首相は派閥の裏金疑惑を受けて14日に人事を断行する考えを表明した（13日、首相官邸）
波乱の臨時国会が閉幕した。副大臣・政務官が不祥事で相次ぎ辞め、自民党派閥のパーティー収入をめぐる裏金問題も浮上した。政策論議が深まらなかったのは残念だ。岸田文雄首相は人事で体制立て直しを図るが、疑惑の幕引きや政治の停滞は許されない。
首相は13日夜に記者会見し、派閥の裏金問題を受けた人事を14日に断行する考えを表明した。安倍派（清和政策研究会）では松野博一官房長官と西村康稔経済産業相が派閥からの資金還流を政治資金収支報告書に記載しなかった疑いがある。鈴木淳司総務相、宮下一郎農相も交代させる方向だ。
党幹部では萩生田光一政調会長と高木毅国会対策委員長が辞意を表明し、世耕弘成参院幹事長らの交代も検討している。
首相は記者会見で「自民党全体に対して厳しい目が注がれている。国民の信頼回復のために火の玉となって取り組んでいく」と強調した。閣僚や幹部らを事実上更迭しても問題は解決しない。党として事実を調査し、国民にきちんと説明する責任がある。
国内外で課題が山積しているにもかかわらず、今国会の経済財政運営や社会保障制度改革などの議論が十分だったとは言いがたい。党首討論はもう2年半も開かれていない。与野党は不祥事追及と並行した効果的な審議のあり方を模索すべきではないか。
自民党は防衛力強化のための増税を始める時期の年内決定を見送った。防衛装備の輸出拡大策を練る与党の作業部会も、他国との共同開発品の扱いに関する部分の結論を年明けに持ち越した。
政府・与党の方針が定まらなければ重要課題をめぐる野党との対立軸は見えにくく、国民の理解も深まらない。岸田政権は政策調整のこれ以上の遅れを招かないよう、体制を早期に立て直して国政に臨んでもらいたい。
東京地検特捜部は国会閉幕を受け、政治資金規正法違反（不記載・虚偽記入）の疑いで捜査を本格化する。派閥パーティーをめぐる収入の記載漏れは岸田派や二階派でも指摘され、問題がさらに広がる可能性がある。
自民党は組織的な裏金づくりが表面化し、党全体への支持を失っている現状を直視すべきだ。信頼がなければ政治は成り立たず、事実の解明と再発防止が急務である。制度の抜け道を塞ぐための法改正も必要だろう。
