バンブーズブログ

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[社説]BRICS拡大を懸念する


 
 
#中東・アフリカ #国際 #社説
2023/8/26 2:00
 
BRICS首脳会議に参加した加盟国のリーダーら(23日、ヨハネスブルク)=ロイター
ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカで構成するBRICSは南アで開いた首脳会議で、新規加盟による拡大を決めた。グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国の声を代弁する場として存在感を高める狙いがある。こうした動きが世界の対立や分断を深める展開が懸念される。

新たに加盟が決まったのはイラン、サウジアラビア、アルゼンチン、エジプト、エチオピアアラブ首長国連邦UAE)。6カ国のうち実に5つが中東アフリカに位置する。米国の指導力がおとろえた地域で影響力を広げたい中国の意図がにじむ。イランの加盟はBRICSの反欧米的な性格を強める懸念がある。

BRICSには共通する理念も政策もない。「主要先進国が主導する既存秩序を揺さぶる」といった脅威論には誇張がある。加盟国が増えれば組織として足並みをそろえるのはさらに難しいだろう。

ただ、中ロの権威主義陣営にとっては多くの途上国を味方につけ、米国が覇権を維持する負担を重くするだけでも成果となる。日米欧は、途上国がBRICSのような組織に引かれる理由やその意味を考えるべきだ。

主に先進国が出した温暖化ガスが引き起こした気候変動問題で、途上国は無理な脱炭素政策や負担の重い適応を強いられている。先進国は新型コロナウイルス対策で露骨なワクチンの囲い込みをみせ、経済危機が訪れると保護主義的な自国優先策を加速させた。

先進国の偽善や二重基準をめぐる途上国の不満を謙虚に受け止め、より公正で透明な秩序づくりに力を入れる必要がある。

BRICSが加盟国に人権状況の改善や民主化を求めることはない。それが多くの途上国を動かす要因になっているのは確かだ。

だが日米欧はBRICSと途上国指導者の歓心を買うような態度を競うべきではない。法の支配や自由な競争こそが持続的な発展をもたらすとして、価値を共有する努力を続ける必要がある。