バンブーズブログ

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[社説]中国の「一帯一路」に大義はあるのか


 
 
#社説 #オピニオン #習政権
2023/8/9 2:00
 
中国が運営権を握ったスリランカのハンバントタ港 =AP
自らの勢力圏を広げるための道具にすぎないなら、国際社会の信用は得られまい。中国の広域経済圏構想「一帯一路」が開始から10年を迎える。

習近平国家主席が一帯一路の原型となる構想を、カザフスタンの首都アスタナで明らかにしたのは2013年9月だった。

古代シルクロードの再現を念頭に、中国と欧州などを陸、そして海でつなぐ。国家の威信をかけた壮大な計画のねらいは、米国の影響力が及ばない独自の勢力圏を築くことだった。

当初、多くの国が中国の巨大な経済力に引かれ、賛意を示したのは事実だ。2017年に北京で開いた一帯一路の国際会議にはイタリア、ロシア、インドネシアなど29カ国の元首が集まった。その直後には、日本の安倍晋三首相(当時)も協力を表明した。

一部の途上国のインフラ整備などで一定の成果を上げた点は評価できる。だが、豊富な資金力にものをいわせた中国の横暴なふるまいは、次第に国際社会から批判を浴びる。典型例がスリランカ南部のハンバントタ港だ。

中国から借りたカネを返せなくなったスリランカは17年、同港の99年間にわたる運営権を中国に譲らざるを得なくなった。途上国を借金漬けにする、いわゆる「債務のワナ」である。

中国は一帯一路を通じ、権威主義的な発展モデルを他国に輸出しようとしているのではないか。米国との対立が激しくなるにつれ、そんな疑念も膨らんだ。

中国経済の成長力に陰りがみえ始め、一帯一路への期待はいまや失望に転じている。

中国と中東欧諸国にギリシャを加えた首脳会議(17プラス1)からは、リトアニアなどが離脱した。主要7カ国(G7)で唯一、一帯一路に協力する覚書を結んだイタリアも脱退を探る。

報道によれば、中国は年内に一帯一路の国際会議を開く準備を進めている。ロシアのプーチン大統領はすでに招待を受け、訪中する予定だという。

これでは一帯一路が、ウクライナへの侵略を続けるロシアを支持する枠組みと取られても仕方がない。距離を置く国や地域はますます増えるだろう。

一帯一路の大義は何なのか。中国の国益を追求するだけなら、その存在意義に疑問符をつけざるを得ない。