バンブーズブログ

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鉄道運賃の規制の縛りを緩め

[社説]固い鉄道運賃を柔らかく
 
 
#社説 #オピニオン
2024/5/8 19:00
 
ダイナミックプライシングの導入で混雑緩和も期待できる(東京駅の新幹線ホーム=5月3日)
航空料金などの自由化は進んだが、今も厳しく規制され、簡単に変更できないのが鉄道運賃だ。規制の縛りを緩め、柔軟な料金設定ができるようになれば、需要の平準化などに効果があるだろう。

官民で知恵を出し合い、乗客にも鉄道会社にもメリットのある新たな枠組みを検討するときだ。

1997年に導入された現行の運賃規制の基本は、人件費や設備の償却負担などの諸コストに適正利潤を加算して運賃の上限を決める原価主義だ。

事業者は必要なコストを確実に回収することでサービスの安定的な提供が可能になる。一方で利潤に一定の制約を設け、不当に高い運賃を禁じる狙いもある。

もともと鉄道サービスは利用者の選択肢が限られ、競争原理が働きにくい。この特殊性を考えると、規制の必要性に異論はない。

とはいえ導入から四半世紀以上が経過し、制度のほころびも目立つ。一つは料金改定の認可プロセスが煩雑かつ硬直的で、実際のコスト変動などを反映するまでに長時間を要することだ。

例えば東急は料金改定の検討を2021年5月に始めたが、実際に国土交通相の認可を得て、値上げを実施できたのは23年春だ。

値上げ不要のデフレ時代とは違い、今後は人件費や燃料費、防災対策費用の増加分を運賃に機動的に転嫁する必要が高まる。鉄道の基盤の安定に向けて、政府には認可手続きの迅速化を求めたい。

さらに季節変動の大きい新幹線などは、繁忙期と閑散期の料金に差を設けるダイナミックプライシングの発想を導入し、需要の平準化をはかってはどうか。

携帯端末経由の予約が一般化する中で、空席状況によって値段が変動する航空機型の料金に道を開く規制緩和も検討してほしい。

鉄道会社にも課題がある。「スイカ」など交通系ICカードのシステムが重く、料金の改定を反映するのにかなりの時間がかかる。もっと柔軟に変更できる簡便なシステムへの更新が必要だ。