#経済 #経済 #社説
2023/8/31 2:00
東京都内のガソリンスタンドの価格表示。レギュラーガソリンが1リットル当たり186円と表示されていた=30日午後(共同)
政府・与党は9月末で終了予定だったガソリンなど燃料の価格上昇を抑える補助金を年末まで延長する方針だ。市場をゆがめる政府の介入は財政負担も大きく、脱炭素にも逆行する。一律支援の単純延長はやめ、真に必要な対象に限った支援に転換すべきだ。
政府が30日発表した最新のガソリン価格の全国平均は1リットルあたり185.6円だった。15週連続で上昇し、15年ぶりに統計開始以来の最高値を更新した。国民生活に悪影響が及ぶとの与党内の懸念から、岸田文雄首相は30日、175円程度に抑える意向を示した。
同じく1〜9月使用分を対象としていた電気・都市ガスへの補助も年末まで延長する方向だ。
政府は2022年1月から石油元売り会社に補助金を配り、卸値に反映させて店頭価格を抑えてきた。当初は3カ月間の予定だったが、ロシアによるウクライナ侵攻で原油高が加速すると補助額を積み増し、期限も4度延長した。
ピーク時の補助額は1リットル40円超に達した。その後、原油価格がいったん下落に転じたため、今年6月から補助額を段階的に縮小し、直近は10円程度に減っていた。
ところが産油国の減産や足元の急激な円安の影響で、原油輸入価格は再び騰勢が強まっている。
燃料高が家計や企業活動に与える影響は大きい。だが国が補助金で市場の価格決定に介入するのは、本来は禁じ手だ。財政支出は今後の延長でいまの4兆円から6兆円超へ膨らむ可能性がある。
補助の長期化が燃料消費の増加を招いているのも見過ごせない。政府は50年に温暖化ガス排出量を実質ゼロにする目標を掲げるが、22年度のガソリンの国内販売量は7年ぶりに増加に転じ、脱炭素に逆行する状況を生んでいる。
当初の狙いが激変緩和にある以上、単純延長はおかしい。消費抑制や移動手段の見直しで対処する余地があるはずだ。低所得世帯や零細企業、農漁業従事者や物流事業者、バスやタクシーなどの公共交通機関など、とりわけ燃料高の打撃が大きい対象もある。支援策はそうした層に的を絞るべきだ。
次の期限とする年末に原油高や円安が落ち着く保証はない。出口戦略のないまま補助を引き延ばせば、歯止めが利かなくなる。終了への道筋を明示することが必須だ。持続的な賃上げなどを通じ、日本経済の体質を強くする取り組みにもっと力を入れるべきだ。