バンブーズブログ

社会の大きな流れは新聞のトップニュースに掲載されます。 その情報を読み続けていくと数年先が見えてきます。それは怖いものなしです。

[社説]児童虐待防止へ地域の総力を


 
 
#社説 #オピニオン
2023/9/12 2:00
 
こども家庭庁の取り組みも問われる
全国の児童相談所が2022年度に児童虐待相談として対応した件数が21万9170件(速報値)となり、32年連続で過去最多を更新した。前年度より5.5%増えた。虐待により亡くなる子どもも後を絶たない。地域の総力を挙げて、子どもを守る体制を築かなければならない。

虐待には身体的虐待、ネグレクト(育児放棄)、性的虐待心理的虐待の4類型がある。このうち心理的虐待が12万9484件と、全体の約6割を占めた。子どもの前で親が配偶者に暴力を振るうなどの「面前DV(ドメスティックバイオレンス)」が心理的虐待に含まれているのが大きい。

児童相談所への通報が増えるなか、リスクをより適切に判断し、迅速な対応につなげるのに欠かせないのが、児童相談所の体制整備だ。政府は22年12月に児童福祉司らの新たな増員計画を立てた。着実に実行したい。

現場には実務経験の少ない人も多い。ベテランの日常的な指導に加え、専門性を高める取り組みも重要になる。

児童相談所と市町村、学校、警察などが、緊密に連携していくことも大切だ。

今起きている虐待への対処とともに、未然防止にも力を入れなければならない。予期せぬ妊娠や心身の不調などで、妊娠中から不安を抱える人は少なくない。21年度に虐待で亡くなった子どもは74人おり、心中を除いた50人のうち、半数は0歳が占めている。

妊婦や親が孤立してしまわないよう、行政が早い段階から寄り添い、必要なサービス利用につなげることがカギを握る。

改正児童福祉法の施行で、24年度から提供できるサービスのメニューは増える。妊産婦、子育て世帯、子どもへの包括的な支援を担う「こども家庭センター」の設置も市町村の努力義務になる。

子どもを守るのは、住民である私たち一人ひとりも含めた地域全体だ。このことを改めて、肝に銘じたい。