バンブーズブログ

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[社説]多極化世界の協調の難しさ示したG20


 
 
#社説 #オピニオン
2023/9/12 2:00
 
G20サミットでインドのモディ首相は首脳宣言を何とかまとめた(10日、インド・ニューデリー
10日までインドで開いた20カ国・地域(G20)首脳会議は、事前に危ぶまれた首脳宣言の採択にこぎつけた。気候変動や食料・エネルギー高など地球規模の課題に協調して対応すると確認した半面、ロシアのウクライナ侵攻への批判は後退し、多極化する世界での合意形成の難しさを露呈した。

G20は世界の国内総生産GDP)の8割超を占める。今年に入ってからの閣僚会合は、ウクライナ危機を巡って主要7カ国(G7)とロシア、中国が対立し、成果文書を出せていなかった。

2008年に首脳会議が始まって以来、初めて首脳宣言を見送るという最悪の事態を避けられたことは、国際協調の枠組みを守ったという観点で評価できよう。

昨年、インドネシアが議長国としてまとめた首脳宣言は、国連決議を引用して「ロシアによる侵攻」との表現を盛り込み、参加国の大半がウクライナでの戦争を強く非難したと言及していた。

今回は領土獲得を目的とした武力行使や、核兵器の使用・威嚇に反対しつつも、ロシアへの名指しや非難の言葉は避け、全体として批判のトーンは弱まった。

ロシアと中国は昨年の首脳宣言の文言を踏襲することを拒み、今回の会議にもプーチン大統領習近平国家主席は欠席した。インドは伝統的に友好関係にあるロシアに配慮しつつ、批判を抑えて宣言のとりまとめを優先した。

会議を通じて鮮明になったのは「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国の存在感の高まりだ。インド政府は昨年の議長国インドネシアと来年のブラジル、2年後の南アフリカが首脳宣言の合意に協力した経緯を明かした。

ロシアへの配慮に反発していたG7や欧州連合EU)も、中立的な立場をとるグローバルサウスと協調し、G20の機能不全を避けるため、譲歩を余儀なくされた。

インドの後押しにより、アフリカ連合AU)のG20への参加も決まった。55カ国・地域の声を代表するAUが加われば、グローバルサウスの主張の重みはさらに増すことになろう。

G20は先進国と新興国・途上国の数が拮抗し、民主主義から強権主義まで国家体制も様々だ。立場や価値観の違いは簡単には埋まらないが、だからといって国際社会の分断を是認してよいわけではない。対話の重要性を認識し、多国間協調への努力を続けるべきだ。